第38話 神たる技の証明(5)

「その願いとやらのために、命を取られる覚悟で来た、と?」


「はい」


 両者の視線がぶつかり合うまま一刻が過ぎた。


 敵と思われ、自分をここまで追い込んだ娘に、自らの神たる技の証明を委ねる――もしそうすることで本当に証明されれば、神たる技と身の潔白を手に入れる。それは、神堕ちから逃れ、夫を失わずに済み、クレイルィの残した大釜にあと一歩で届くというところまで押し上げる奇跡――。


 ケリドウェンが嘆息する。


「いいでしょう。これは賭けです。そうする他、わたくしに残された道もないのですから」


「ありがとうございます」


 娘が平伏から直り、詩吟を歌うような美しく清らかな声で、最後の証明を聞かせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る