第15話 消えた娘

「セージ、起きろ! 大変だ!」

 朝の鶏より喧しい相棒に起こされてヒーラーは目を覚ました。

「なんだライアン、まだ夜が明けたばかりだろ。もう少し寝かせてくれ」

「シスがいない!! 出てっちまった!!」

「ああ?」


 セージが体を起こすと、焚火はまだ燃えていたが、その向こうの薄い布団に娘の姿はなく、枕元に魔石とスキットルだけが残されていた。


「弓と矢筒がない。先に魔物狩りに出たんじゃないのか?」

「だったら一言くらい掛けるだろ? 俺達仲間になったんだから! きっと俺達のいびきが煩さすぎて嫌になって出てっちまったんだ!」


「俺って言うなよ。鼾が煩いのはお前だけだ。そんなに心配なら探して来いよ。焚火はまだ燃えている。最近まで薪がくべられていた証拠だ。お前がやったんじゃなければあの女だろ。まだ近くにいるかもしれない」


「わ、わかった! 行ってくる!」


 慌ててテントを出ようとする騎士にヒーラーが「おい、忘れてるぞ!」と呼び止め、鎧に立てかけてあった紋章入りの剣を引っ掴み放り投げる。騎士は振り向き様にパシッとそれをキャッチして「サンキュ」と言い、ニカッと笑って、娘の名前を大声で叫びながら全速力で走って行ってしまった。


 テントに残ったヒーラーは、娘の枕元に残された魔石とスキットルを見て、悔しそうに額に手を当てた。


 昨日、あれを女が飲んでから二人に回した。だから油断した。

 この俺がたった三口で潰れるわけがない。ライアンだってそうだ。

 

「ちっくしょ、あの女、俺達に一服盛りやがったな?」



 ……しゃーねー、俺も行くか。

 ヒトコト言ってやんなきゃ、気が済まねーからな。



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