第8話 クロークの弓術師(1)
うららかな昼下がり、森の中にある青い湖の畔で、鎧に身を包んだ騎士が大岩に寄り掛かり
小一時間もそうしていただろうか。突然、森から鳥の群れが飛び立ち、その鳴き声のけたたましさに目を覚ました。森の中を何かが疾風の如く駆け抜け、みるみるこちらに接近している。耳を澄ませ藪を掠める音で場所と速度を測るが、このスピード、尋常ではない。
魔物か!?
騎士は立ち上がり腰に挿した剣に手を掛けて構えた。
三体……いや、四体――!!
ガサッと森の入り口の藪が揺れ、
来る――!!
剣を抜いた瞬間、深緑色のクロークにフードを被った何者かが視界に飛び込み、騎士が瞬きする間にその脇を迅速にすり抜け岩場に到達、頂点に向かって駆け上がり、最後の一歩で岩の上、空高くに飛んだ。
逆光の天にひらひらと靡くクロークに目を奪われる騎士。そのせいで今まさに背中に襲い掛かろうとしている黒豹のような魔物三体が見えていない。クロークの人物は上空で素早く弓を構え、三本の矢をつがえて躊躇なくそれを放った――! 騎士にはその矢が自分に向けられたように思えて思わず尻もちをつく。
ドス、
ドス、
ドス、
シュタ。
クロークの人物が着地するのとほぼ同時に、矢の刺さった対象が重量を感じさせる音を立てて倒れた。尻もちをついて唖然とした騎士の後ろで、魔物の骸から柔らかな光の筋が天に放たれ霧散する。後にはこぶし大の赤い魔石が転がった。
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