第28話 有罪の証明(2)
「証拠なんて何処にある? 先程貴様は自分で、精霊の骸は光になって霧散してしまうと言ったではないか。骸がなければ死んだ場所も死因もわかるはずがない」
「そんな奢りがあったからでしょうね。あなたは湖に浮かんできたクレイルィのドレスを拾い上げ、姉を刺した忌まわしい短剣をそれにくるんで湖に捨てた。きっと青霊湖の底を浚えば出てくるでしょうね。ワインが染みて胸に穴の開いたドレスと、それにくるまれた貴方の紋章付きの短剣が。見たところ、今も腰に挿していらっしゃらないようですし」
「貴様、ワタシを嵌める気だな? ワタシの短剣を盗み、ここへ来る前に青霊湖に沈めておいたのだろう? 騙されんぞ」
「どうやって? わたしが森抜けを果たし、城に辿り着いたのは今朝。それまで城の周りの結界が不審な侵入を感知したことは一度も無かったはず。確かに今朝は城に立ち寄り、姿も見られておりますが」
「そら見ろ! あの城は人目が少ない。おまけにワタシが不在だったのだ。いくらでも盗むチャンスがあるではないか」
「盗むチャンスが仮にあったとしましょう、そこに短剣があればの話ですが。しかし、青霊湖に沈めておくのは不可能なのです」
「ナニ……?」
「何故なら、この寒波のせいで青霊湖はびっしりと分厚い氷に覆われているのですから」
「――!!」
「そう、まるで、貴方による証拠隠滅を防ぐかのように。そして同時に、わたしが証拠捏造などできぬように」
「違う違う違う!! やったのはモルダだ!! あの枯れ枝のような召使いだ!! あの者がクレイルィを殺し、その報いを受けて三頭目の豚になるのだ! 貴様が何者かは知らんが、あの枯れ枝を助けたいのならもう手遅れだ。刑の執行まであと二時間もないぞ。残念だったな!!」
「二時間もあるなら十分です。貴方が真犯人であることをハッキリさせるなんてことは、ね」
「な……んだと?」
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