第20話 臨時政府の地下施設
警護で佐藤氏の車に乗っていた。今日は国会の工事の視察だった。
議員宿舎で佐藤氏を乗せて国会に向かっていた。
駐車場に止まり、俺は助手席から降り後部席のドアを開けた。
残り二人の警護員は廻りを警戒していた。佐藤氏はゆっくりと車から降りた。三人で囲むように工事現場に向かった。
このときが狙撃手に最も狙われ易い時で過去二回ほど狙撃された。
国会の建物の端の一部分が鉄板で囲われ工事が行われていた。
工事用の出入口を通り建物の中に入ると、幅三メートル程の階段が折り返し地下に向かって作られていた。
降りて行くと通路に繋がった。そこに現場監督が立っていて進捗状況を説明した。
監督は渡辺という名前で首相の甥だと佐藤氏は俺に紹介した。
渡辺が此処は地上より十メートル程下った場所で宿泊施設、会議室、小ホール、武器室等があり、この下の階は今工事中で主に倉庫と設備室を予定していると話した。
小ホールに行き舞台の脇の階段を上がるとホールの上の点検歩廊があり、万が一の時は其処に隠れられると説明した。
「此処は臨時政府が一時的に災害から避難する為に作った。もし、私の警護を引き受けてくれたら此処の施設で暮らすことになるので連れて来た」
「武器庫と訓練施設がありますが? 臨時政府は戦闘を想定しているのですか?」
「恐らく、大国との戦いになるだろう。警護隊員は君を入れて十人しかいないが、戦闘員は民間人を集める。そして君達に訓練して貰うつもりでいる」
「臨時政府には政治家、官僚の人も大勢参加するのでしょうか?」
「いや政治家は私の他に一人だけで、それが大国の息の掛かった大物の政治家H氏で、他の政治家は全て地下施設に入る。官僚は民間から募集する」
「臨時政府は東京中心で動きだしますが、地方は如何なるのですか?」
「地方にも臨時行政府を作る。全国に二百三十程の地下施設がある。地方の行政で管理していて政府の地下施設と繋がっている。そこに私の息が掛かった地方の政治家が地下施設に入らず、ここのように地下を作り臨時行政府を立ち上げる。そして、連絡網を作り大国軍と暴動に対処する」
俺は地下施設の数と規模の大きさからどんな災害を想定しているのか想像は出来なかった。
地震は一過性のもので地下を作る必要がないし、核なら地下に入っても一時的な避難で意味がない。そのどちらでも無いように思え不安になった。
暴動に対しての巡回は政府の発表の後から始める計画だった。
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