第15話 正当防衛
まだ夢で記憶を思い出していた。
夜中の2時頃玄関の鍵を開ける小さい音が聞こえた。
俺は部屋の入り口の袖壁に隠れて暗視装置を付けて木刀を持ち立っていた。
三人の男がドアを開けてゆっくり入って来た。暗視装置を付けていた。手に持ったナイフが外の光に反射し鈍く光っていた。
二人が部屋の中に入って来て、俺に対して斜めに背中を向けていた。
三人目は部屋の入り口で待機しているようだった。
俺は精神的に限界だった。我慢できずに俺は木刀を振り上げて二人の首を次々に打った。男二人は気絶してその場に倒れた。
それに気が付いた三人目の男がナイフをかざして向かって来た。俺は木刀でナイフを払い頭部を打った。男は気絶したが、俺は気が動転し夢中になって倒れた男の背中を木刀で叩いていると不意に手を押えられた。
(落ち着け)と声がした。国の調査員だった。
素早く気絶している三人の男を連れっていった。
次の日に上官から呼ばれた。襲った男達の情報が分かったらしい。
(やはり大国人で地下施設の建設作業員だった。例の工場の宿泊施設にいたらしい。襲った理由と誰の指示かは頑固として口を割らない。子供の頃から教育されて半分ロボットのようでこの先も情報を取るのが難しい。三人の内で部下らしい二人に尋問したが、もう一人がリーダーのようだったが情報が取れない)
(情報が取れないと言うのはどんな状態ですか?)
(重体で意識がない)
(一番後にいた男ですか?)
(そうだ、祐介君は鍛えていて普通の人より二倍の力が出せる。力の出し方を調整できるようにしなければならない。今回は初めてで仕方がないが死闘をする時は全ての力を出す、今回は捕獲して情報を得るだけなので力を加減する。これからはそこを考えて行動するように)上官は話し写真を出した。
(この男がリーダーだが見覚えはあるか?)
(はい、黒岩と居酒屋に居たヒロとか言う坊主頭の男ですが、治る見込みはあるのですか?)
(駄目だと思う。後三日持てば良い方だそうだ)
俺はショックを受けた。自分がしたことで人が死にかけていると。
(その男が死んだらどうなるのですか? 私は殺人者ですか?)
(大丈夫だ。戦闘中で正当防衛とする。男は地下施設の現場作業員だからゼネコンに頼んで工事中の死亡事故として貰う)
俺は人を殺してしまった・・・・・・
「キシツ、如何したの?うなされていたよ」舞が心配そうに覗きこんでいた。
もう隠しきれない舞に危害が及ぶ可能性がある。
「舞、俺は人を殺している」
「えっ、如何して?」
「正当防衛とされたが、殺した男の仲間に狙われている。前に来た宅急便もその仲間だと思う。これ以上此処にいたら舞に迷惑が掛かるから、明日出て行こうと思う」
「嫌だ! 嫌だ! キシツは行く処があるの?」
「無いけど、繊維メーカーに行こうと思う」
「駄目! キシツの事知らないと言っていたわ!」
まるで子供のようだった。
「そうだ! 店の二階に泊れる処があるから暫く其処にいて!」
そう言われると別れを伸ばしたくなる。
まだ黒い高級車が大国の組織か? 政府の組織か? を見定める必要がある。
舞の言うように暫く様子を見るか? 俺は政府の組織の一員だった事が分かった。
「分ったよ。店の二階に暫くいる」
「良かった! 明日一緒に行こう」
舞は少し安心したらしいが、何れこんな風になると予想はしていたと思う。
次の日の朝、舞の車に乗り店に向かった。廻りを警戒していたが例の黒い高級車は居なかった。
舞が店を開けて俺は二階に上がって行った。六畳程の部屋とユニットバスと小さいキッチンがあった。これなら暫く此処に居られる。
女の子が出勤して来たようだ。舞との話声が聞こえる。窓際のベッドに仰向けになると又思い出して来た。
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