第16話 おじさんの警護
俺は上官に呼ばれた。
(警護の仕事を頼みたい。期間は一カ月で終わると思うが、黒岩の件で狙われている日本人がいる。その男のアパートの隣に住み込んで、夜だけ警護して欲しい)
(夜は一緒にいるということですか?)
(いや、自分の部屋で待機して非常用のボタンが押されたら駆けつけて
くれれば良い)
(それだと間に合わない可能性もありますが?)
(調査部の話だと狙われる可能性は低いが、万が一を考えての警護だそうだ)
(昼間はアパートで寝ていて良いのですか?)
(駄目だ、警護していると悟られては益々狙われる。会社員の振りで午前中に出勤する振りをして午後か夜に帰って来る。遅くても十時までに戻って来ること。昼間は何をしていても良い。一回だけ、朝出かける時に顔を合わせて顔を覚えて貰う。あとは挨拶程度で話はしない事)
本人と息子の写真を渡された。
俺はアパートに行き大家に部屋の鍵と隣室の予備の鍵を渡して貰い、隣の部屋に入りボタンのケースとメモを置いて来た。
次の日の朝、俺は隣が出掛ける気配を感じて同じタイミングで玄関を出た。
そして、隣がこっちを見て(お早うございます)と挨拶をしてきたので(お早うございます)と笑顔で返した。
俺の笑顔で何か話しかけて来そうなので口の前で手を小さく振ったら隣は察しが付いたようでそのまま出掛けて行った。
取合えず確認はして貰ったが、警護の相手が歳を取っていたので驚いた。自分の父親と同じ位だった。
俺の父親は地方の会社の役員をしていた。
俺が上京して仕事が無い時も余裕で仕送りをしてくれたが、俺が二十五歳の時に会社が倒産してその心労で体を壊してしまった。
その時から俺は少ないけど実家に仕送りした。
自衛隊用の耐火服の実験契約の時に事務所を介さない方が報酬は多いので芸能事務所を辞めた。そして、報酬の多い自衛隊の警護隊員になった。
俺はそのまま都心に向かった。
夜になりアパートに帰ろうと歩いていた時に不意に路地に引き込まれ三人と男と乱闘になり、頭を鉄パイプで殴られ逃げるように舞の店に駆込んだ。
これで記憶の殆どが戻った。
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