第17話 舞との別れ

 二日程経った午後二時頃「キャー 翔! 大丈夫!」「キャー 助けて!」と店から舞と店員の叫び声が聞こえた。


俺はゆっくりと階段を降り様子を見た。


翔が倒れながら黒いスーツの男の体を両手で拘束していた。体中からおびただしい血が流れている。何か所も刺されて今にも意識が無くなりそうだった。


その後ろに舞と店員が恐怖に慄き立っている。


翔の前に二人の黒いスーツの男がナイフを持って立っている。恐らく目撃されたから舞と店員の命を奪うだろう。


男達が襲おうとしたので、壁を叩いて業と大きい音を出した。


二人共驚き此方を向いた。


俺を確認して向かって来る。


一人目はナイフを持つ手を取り投げた。


もう1人がすかさず刺して来たので避けて拳で顎を打った。


倒れている男の顎を蹴り失神させた。


翔が拘束している男に近づこうとした時、黒に近いグレーのスーツを着た三人の男達が店に入って来た。


「祐介君、やっと見つけた」


国の調査員達だった。


三人は拘束され連れて行かれた。調査員が呼んだのか? 警察と救急車が来た。


舞と店員は俺の処にやって来たが恐怖で顔が蒼白だった。


翔は絶命していた。


翔が舞にお金を借りに来たらしい。舞と話している時に後ろから黒服の男に刺されたと店員は警察に話していた。


翔の服が前に俺が着ていた物と同じで俺と間違えられたのだろう? 


「さあ、祐介くん帰ろう。君の上官も安心するだろう」


俺は舞の顔を見た。悲しそうな、諦めたような目をしていた。


「舞さん、祐介君は国の大事な戦力の一人です。諦めて下さい。後三年過ぎてお互い無事だったら連絡して下さい」察したように話した。


「後三年とは? 無事とは? 何が起こるのですか?」


「それは極秘です」


俺は二人の調査員に拘束されて店を出て行った。


振り向くと舞が顔を手で覆い泣き崩れる姿が見えた。


俺はその日からキシツから祐介に戻った。

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