第10話 耐火服
「キシツ、起きて」の声で目が覚めた。
舞がパジャマ姿で立っていた。
「もう朝食の支度をしてあるから食堂に来て」と話し寝室から出て行った。
壁の時計を見ると八時近かった。ご飯を食べながら戦隊物が終了し、繊維メーカーに面接に行った事まで思い出したと話した。
「まだキシツは名前も歳も出身地も分からない。だから今日ネットで戦隊物の芸能事務所を調べて良い?」
「いいよ」と答えた。恐らく身元も分かるだろうが嫌な感じはしていた。
夜、舞が帰って来た。戦隊物の名前が分かりホームページより出演者の
名前が分った。
俺の記憶のグリーンレンジャーは名前が草加祐介で年齢は二十七歳だった。
出身地が静岡県と分かった。芸能事務所も分かったので電話をしたらしい。
大分前に事務所との契約は解除して繊維メーカーに移ったと言われて繊維メーカーに電話したら、そのような男は居ないと言われたらしい。
繊維メーカーが何かを隠しているようだ。名前は草加祐介か?
実感が湧かなかった。
「キシツ、名前が分かったから祐介と呼んだ方が良い?」
「好きに呼んで良いよ」
「じゃ、キシツで」舞は俺の記憶が戻らない事を望んでいるようだった。
次の日の朝方に続きの夢を見た。
電車から降り駅を出て歩道を歩いていた。暫く歩くと大きな工場が見えて来た。
工場の入口で守衛に(訪門者)のカードを渡されて首に掛けた。
二階の小会議室に入った。すでに九人の面接者らしき人が椅子に座っていた。
その中に黒岩もいた。
事務員らしい二人の男が入って来た。
上司らしき男が実験の内容を説明した。
(我が社は耐火服の製作、販売を始めることになりました。ご存じの通り高い外気温度から体を守る服で試作品から製作して、それを皆さまに着て貰い様々な温度や時間でデーターを取らせて貰います。完成は4年後でそれまでが契約期間になりますが、進捗状況で短くなる事もあります。皆さまには週に一度ほど午前十時から午後四時まで仕事をして貰います。報酬は月四十万で交通費も負担します。昼食もご希望の方にはお出しします。事務所を介している方は事務所を解約して個人で契約してもよろしいです。ただ極秘事項なので実験終了までは秘密でお願いします。机の上に契約書があるので納得した方は署名をして下さい)俺は契約書に署名した。
アパートに帰り仕事が見つかった事を円華に伝えようと携帯に連絡した。
一カ月ぶりだった。仕事が決まった事は喜んでくれたが、又会いたいと言うと映画の準ヒロイン役が決まり、明日から地方で撮影が始まるので暫く会えないと言われた。分かったと俺は携帯を切った。
工場の実験室にいるらしい、着ているのは繋ぎの服、ヘルメット、手袋、ブーツで宇宙服のようだった。ヘルメットにはコードと呼吸用のビニール製のパイプが繋がっていた。一時間近くになると耐火服の中は多少熱くなり汗が出て気分が悪くなってきたので実験員に伝えると実験は終了した。
黒岩から実験の情報交換をしようと誘われた。
居酒屋の個室に黒岩ともう1人の男がいた。もう1人は黒岩の担当で大国人のヒロと紹介された。耐火服に三種類あり、俺が実験しているメンテナンス用、黒岩の警護用、そして自衛隊用があると教えて貰った。
自衛隊用の実験が過酷で一人が脱落して隔離されているとも聞いた。後で黒岩の担当の事をメーカーの実験員に聞いたらそんな人は会社に居ないと言われた。
次に黒岩と飲んだ時に問い詰めたら、大国の繊維メーカーの人だと白状した。報酬が倍で借金も肩代わりしてくれるのでそのメーカーに移ったと、借金は一千万以上で町金にも借りていたらしい。
戦隊物で将来は俳優にと勘違いしてブランド物を買って派手な女と遊び金を使ったらしい。そして黒岩が姿を消して俺が変わりに実験することになった。
其処で目が覚めた。やはり繊維メーカーに所属していた。
実験が極秘なので舞に知らないと答えたのだろう? 舞が何時ものように此方に背中を向けて寝ていた。
又思い出そうとしたが寝てしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます