第28話 総裁の暗殺

 地下の政府の首相から連絡が入った。


大国の艦隊が我が国を占領するために一か月後に大国を出撃すると情報が入った。

各官僚と会議をした結果、艦船、戦闘機、戦車、ミサイルなど高温に対処して分解してあるので使用出来ない。最終手段は原潜より核弾頭を大国の艦船の集結地に打ちこむことで、それは首相が判断すると伝えて来た。


総裁は大国の艦隊による攻撃は覚悟しているが、その前に日本に潜伏している大国の兵士が攻めてくると話して地下施設の警護隊は何人いるのか? と聞いた。

首相は二千人と答えた。

総裁はその時が来たら優秀な隊長に千人の兵士を引き連れてそちらに派遣すると約束した。


臨時政府内では地下政府との対応について対立していた。


臨時政府と地下政府と合同で新政府を立ち上げる考えの総裁と地下政府は我々を見捨てた。出入口を破壊して永遠に閉じ込め滅亡させる考えの副総裁だった。


大国の影のある副総裁の真意は日本を無政府状態にすることだった。何時副総裁が仕掛けてくるか? 俺は神経を尖らせていた。


事件が起きたのは災害が過ぎた直後だった。


俺は総裁の護衛で会議場に向かっていた。総裁の前には、マシンガンを持った二人の護衛、そして、後に俺が付いて長い廊下を進んでいた。


その時、廊下の隅からマシンガンを持った三人の兵士が現れた。総裁の前の護衛の二人が素早く反応しマシンガンを発砲して向かって来た2人の兵士は銃弾を受け

衝撃で倒れた。


しかし、後の兵士一人がその隙にマシンガンを発砲して護衛の二人は胸を撃たれ血を噴き出しながら仰向けに倒れた。


総裁と俺はその血を浴びて総裁は滑り床に腰を落とした。俺も顔に掛かり目が霞んだ。必死に目を拭き男の手を撃った。男はマシンガンを手から落した。


(早く総裁を連れて逃げなさい)と女の子の声が微かに聞こえた気がした。


俺は腰を落としている総統の腕を掴み、警戒しながら後に下がった。


倒れた兵士は起き上がりマシンガンを構えようとしていた。撃たれても致命傷を負っていなかった。


その光景を見ながら、総統を連れて戻り始めていた。全てがゆっくり動いているように感じた。撃たれると感じたとき、薄く影のようなものが見えた。


それは女の子のようだった。手に拳銃らしき物を持っていて早い速度で兵士のマシンガンを撃って消えた。


二人の兵士はマシンガンをその場に落して手を押えその場にうずくまった。


直ぐに、応援の警護が駆け付けて来て三人を拘束した。


三人の兵士は金属のスーツを着ていたので銃弾は弾いていた。


俺は兵士の手に銃で撃たれた跡が無いか確認したが無かった。マシンガンを落としたのは肘の部分の金属スーツの伸縮性が悪く、金具で肘が傷つきその痛さに思わず落したと判明した。

     

総裁に女の子を見ましたかと聞いたが見ていない。疲労で幻覚を見たのでは? と言われた。


疲れてはいなかった。生命の危機に関わる異常な状況なので幻想を見たと思った。でも、何処かで見たことがあるハーフの女の子だった。


兵士の自供で暗殺は副総裁の命令だと判明した。


これで、臨時政府内での抗争が起きるのは明らかで、準備を急がなければ

ならなかった。


総裁の五千人の兵士の内、三千人は自衛隊の駐屯地に武器の組立と回収に行っている。暫くは戻って来られなかった。


副総裁側には二千の兵士が臨時政府内にいた。そして、外部の千の兵士が合流する予定だった。


国会内での戦闘を避けたかった総裁は俺に意見を求めた。


「二千人の兵士を、国会の外に出しましょう」


「えっ、それでは、私の廻りは警護員だけになってしまうが?」


「それが狙いです。まず駐屯地から千五百人の兵士を戻らせて二千人の兵士と外で合流させます。その間に、副総裁の外部千人の兵士が、国会内に入り封鎖するでしょう。わが軍の三千五百人で国会を取り囲みます。出入口が多いので副総裁の軍も対峙するにもほぼ全員となるでしょう。総裁を狙うのは副総裁の警護員の十人だけとなるでしょう。総裁は地下にある小ホールに立て籠って下さい。ホールの上部の点検通路に、十人の狙撃手を配置します」


「なるほど、副総裁を倒せば激しい戦闘はしなくて済むだろう。分かった」


俺は駐屯地に千五百人の兵士を戻るように連絡し二千名の兵士を外へ出した。


やはり、外部にいた千の兵士が入って来て国会を封鎖した。


俺の指示で三千五百の兵士は国会の出入口付近に展開し銃撃した。お互い撃ちあったが硬直状態になった。

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