第27話 恒星の接近
臨時政府の防衛軍にも二百度で三時間の耐火服が配られた。
「三百度仕様でなくても良いのですか?」俺は総裁に聞いた。
「地上に残っている天文学者に恒星の観察を続けさせている。軌道が安定してないが少しずれていて百度位が最高との予測が出ている」
「その話は国民に教えなくても良いのですか?」
「まだ、推定で確定でないので間違っていたら取り返しがつかなくなる。また、国連の各国が一律に発表したことで、我が国だけで勝手な発表は出来ない。それに大国に知られたら直ぐにでも攻めてくる。ただ三百度はあり得ないとの予測での耐火服は二百度にした」
俺はそれを地上にいる国民が知れば大分安心出来ると思った。
色々なしがらみで国民を騙すのは理不尽だと感じたが、総裁にも色々な思惑があるだろうと理解した。
臨時政府は恒星の最接近まで一カ月に迫ったので電気、水道、ガスなどのライフラインは一カ月間を自動運転させ、保守点検用に二百度の耐火服を用意した。
そして、地下に避難して交代でメンテに対処するようにした。
生活に支障のない企業、店舗、工場などは休止し食料を確保して地下に潜るように指示した。
恒星が最接近する日の十五日前になった。
俺達は二百度の耐火服を着て最初の巡回に出た。
耐火服は警備隊仕様で2時間だった。
国会周辺を巡回して戻って来たが温度が上がらない事に気が付いた。
予測の温度は五十度のはずだったが、三十度と春にしては少し暑いくらいだった。
夜は段々短くかくなり最接近時では夜がなく一日中明るかった。
温度は除序に上がったが、最接近で五十度までしか上がらなかった。
それから俺達は耐火服を着ないで巡回した。
人々はまだ信じられなく避難施設に籠っていた。
それが十日近く続いた。
地上では施設に入れなかった人々がぞろぞろと出て来た。
温度が高くなく生きていることに狂喜したが、年寄りや体の弱い者が脱水や熱中症で大勢亡くなっていた。
巡回で個人の家に入ると老人達が亡くなっているのを幾つも確認した。
その後に温度は四十度位に落ち着き夜も少しずつ戻ってきた。
まだ昼間の巡回中には熱気が残り、俺は思わず空を見上げた。空に二つの太陽が見えて、一つは段々小さくなって遠ざかっていった。
そして、山、河原、公園などに煙がいく筋も立ち上がった。
遺体を火葬場が処理しきれず、自分達で身内の遺体を焼いていた。
それは全国的で暫く続いていた。
余りにも亡くなった人が多いので遺体を焼却する又は焼却する為の燃料を売るなどの商売が一時繁盛した
。
温度が低かったことは地下施設も海底マンションの人々も感づいていたが地下政府や管理者は外に出ることを禁止した。
大国の兵士が少数だが施設の廻りに待機していた。
それに暴徒が組織化した民兵も反政府の思想を掲げて政府の地下施設を狙っていた。
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