第8話 殺人事件

 次の日の夜、舞の帰りを待っていたように叔母がやって来た。


舞が悪い男と同棲していると翔より告げ口があったらしい。


舞は俺が記憶喪失で預かっていると説明していた。


「お金は大丈夫なの? 翔のように使い込まれていないか調べたの?」


「そんな事をする人じゃない。お金は私が管理しているから」


「分ったわ。じゃー 記憶が戻ったら出て行くのね?」俺

を疑いの目で見ながら聞いた。


「記憶が戻ったら出て行く」俺は答えた。


舞の顔を見ると悲しそうな顔をしていた。


叔母さんが帰ってから「キシツ、ごめんね。嫌な思いをさせて、今から夕食の支度をするから待ってね」


言いながら舞は買って来た夕食の材料をシンクの横に置いた。


キッチンのカウンターの上の小さいテレビが情報番組を放送していた。


急に画面に女性キャスターが写りニュースを発表した。


(三か月前に身元不明の遺体が発見された事件で身元が判明しました。名前は黒岩光男で年齢は二十七歳で栃木県出身でした。二年程前に派手にお金を使い女性達と遊んでいたとの情報がありました。その後の行方は警察も把握してなく、殺害方法で何かの組織と関わっていた可能性があると警察は発表しました)

それから画面上に写真が映し出された。


(これは黒岩さんが三年前にテレビドラマの戦隊物で俳優をしていた時の集合写真です)と画面に写した。


黒岩と思われる男と一人の女性がはっきりと顔が写っていて他の人はぼかしが入っていた。


(一緒に移っているのは有名な女優の円華さんで、まだ有名になる前に戦隊物のヒロインの友達として出演した時の集合写真で警察の提供です。それから、黒岩氏と交遊していたと思われる女性が殺害されていて警察はその関連性も調査しているとのことです。容疑者については、まだ手掛かりが無いようです)


俺はこの男の記憶があったが? それ以上は分らなかった。


戦隊の言葉に何かを感じた。


女優の円華も記憶があったが? 恐らく彼女の映画を見たからだと思った。


俺が見つめているので「何か思い出した?」と舞が心配そうに聞いてきた。


「黒岩の名前は聞いた事がある。それと戦隊の言葉で何か分りそうな気がする」


「戦隊の名前が分かれば芸能事務所も分かるかも知れない? ネットで調べてみる?」


「良いよ。まだはっきりしないし、自分で思い出すまでちょっと待って」


「分ったわ」


何時ものように先にシャワーを浴び寝室のベッドの上で仰向けになり、天井を見つめて思い出そうとしていた。


天井のボードのトラバーチンの柄を見ていると少し思い出してきた。

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