第16話 SXフォーラム準備

シモーネさんは

「フォーラム案内もデモも良くなってたよ〜」

と声をかけてくれました。


その割には、商談報告書の作成に苦しんだんですが。

ま、いつも通りですね。


しかし、その商談報告書を書くことによって「次はこうやってみよう」「次までにこれを練習しておこう」という作戦が立てられることも確かでした。


だから、報告書の苦しみも何だかんだ慣れてきたかもしれません。


決して仕事がうまくいっていたわけではないですが、濃い日々を過ごしていたからか、あっという間に研修期間が終わりに差し掛かろうとしていました。


そのフィナーレとなる大仕事が、SXフォーラムです。


何するか分からんですし、面倒ですねぇ。

アイザック課長がデスクによちよちと近づいてきました。

小人族独自の歩き方ですね。嫌な予感がしますよ。


「ファビオちゃん、フォーラム中の仕事だけど」

「はい」


何を振られるんでしょう?


「事務所で、溜まってる商談報告書を書いてて。フォーラムが始まったら後方の見学席で、見ててね〜」


あれ?

それつて、フォーラムの仕事何もないってことですか?


気合い入れて髪も切ってきたのに、ちょっと拍子抜けですねぇ。


ま、わたし新人研修中だし、そんなもんでしょう。


こうして、んたしだけ特に準備もなく、SXフォーラム本番を迎えました。

講演を聴きながら必死にメモを取ったんですが、単語を断片的に記録するだけで、ほとんど理解はできませんでした。


その辺は悔しいですが、それ以上に一仕事終わったこの開放感が勝ります。

いやー働いた働いた。

終わった終わったー。


帰っていいのかな、と様子を窺っていますと、遠くで社長が手招きしているのが見えました。


さすがにわたしのことじゃないだろう?


「おーい、ファビオちゃん」


わたしか。

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