第2話 魔法ソリューション展

魔法ソリューションの会場となっている、ここ首都ドンスレイシュの中で最も大きい展示会場--ドンスレイシュ・メガ・サイト。通称メガサイト。


大きな展示会というだけあって、入場待機列が数百メートルにもなっているところから驚いました。


ちなみにメートルとは、おおよそこの惑星の円周の4万キロ分の1の長さで、両手がちょいちょい広がるとそれに相当します。

正確な定義は光魔法を使って算出されているはずです。

それはそうと、わたしたちの住むこの地上は球体なのだそうで。当然、実感はありません。


「間に合いますかね?」

「間に合わなかったら、前の列の奴ら全員の髪型がモヒカンになるように呪ってやるわ」

なんて残酷な。髪は命ですよ。


集合時間の設定をミスったのでしょうか、入場に時間がかかり、トライ・ウィング・フォースが登場するスターバーグの講演まで時間が迫っています。


入場待機列の進みが遅いのは、明確な理由があってのことでした。


前方の検査ゲートで、1人ずつゆっく歩き、係員から証明書をもらっています。


検査は手荷物だけでなく、入場者自身にも行なっています。

入場者が悪の心を持っていないか、検査しているのです。


検査ゲートは洞窟の入り口のように、細長い楕円弧の形をしています。

その天井には魔譜が掘られており、ピアノの音に合わせて光っていました。


ピアノはゲートの真横、通過する入場者によく聴こえるように配置されています。


上等な腕前のピアニストが奏でるは、魔除けの審判よの力を持つ曲『Gates of Glory』。


「ピアノ、上手いですね。間近で聴くと、特に。結構な魔法使いですよね、これ」

列が進み、振動を肌で感じるようになってきて、思わずボーグレンさんに話しかけました。

「もっと速く弾きなさいよ。間に合わなかったらピアノのサビにしてくれるわ」


ボーグレンさんは絶好調。


苛立った人との待ち時間というのは長く感じるもの。上等な演奏のおかげでなんとかやり過ごせます。ありがたや。

わたしとボーグレンさんの番になり、


「私が先よ!」


と、ボーグレンさんがゲートに突っ込んでいきました。


しかし、係員さんにすぐさま注意を受けるボーグレンさん。

「お客さん、ゲート内はちゃんとリズムに合わせて歩行してくれないと、ちゃんと検査できませんよ」


ボーグレンさんはイライラが絶好調。リズムなど取れるはずもありません。

仕方なく係員さんが手拍子を打ってくれた。


話は変わりますが、悪の心を持つ本物のテロリストならそもそも入場ゲートなんて通らないのでは?

きちんとした検査ですが、前提としては性善説に基づいているわけです。


つまり、実際のところゲートに引っかかる者などいないはず。

果たして、何の意味があるのでしょう?


ぱっしーん。


ボーグレンさんがゲートから弾かれました。


「そういえば、ぶっ殺すとか何とか言ってましたね」

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