第31話 エアバッグ製造会社『スピリッド・オブ・ジ・エア』

ロッタさんと再び喫茶店に入って、作戦会議を始めました。


さっきロッタさんを誘拐しようとしたウェイトレスさんは正座で反省していますね。

安全確認ヨシ。


さて、商談の作戦会議です。

まずは、私がどこまで理解しているか。

「スピリッド・オブ・ジ・エア。馬車での事故から人命を守るためのエアバッグを製造しているメーカーですよね」


エアバッグ。

衝撃を感知して、風船を膨らませるシステムです。搭乗者が馬車の外へ飛び出したり社内の構造物にぶつかったりするのを防ぐ役割があります。


といっても、そううまく機能してはいません。

うまく衝撃を感知できなかったら、衝撃を感知してから風船が膨らむまでの時間にラグかあったりと、課題が山盛り。普及にはいたっておりません。


ちなみに、衝撃を感知するギミックを開発したのもスピリッド・オブ・ジ・エアでした。


歴史を紐解いていきます。


初期に開発されたのは、専属の魔法使いが同席する仕組みでした。走行中に常に『To Keep Us Safe』を演奏することで、センサーが衝撃を感知できる状態を保つ仕組みです。


しかし、人件費がかかること、大型の馬車でしか運用できないこと、魔法使いが長距離移動に対応できないこと、そして衝撃の瞬間まで演奏している必要があることなどから、ほとんど普及しませんでした。


スピリット・オブ・ジ・エアはそこからシステムの改良を続けてきました。


今は、馬の足音をリズムとして見立て、車輪の回転を動力としたオルゴールで『To Keep Us Safe』を演奏して、衝撃を感知する仕組みが研究開発中だそうです。


そこへ来て、自動馬車が普及しようとしています。

つまり馬の足音が使えない。

馬車がなくなることはないので、今の研究は続けつつ、新しいリズムの確保が必要です。


ここまでが私の理解。


そこからロッタさんの補足が入ります。


「スピ社はね--」


そんな略し方あります?


「--スピ社はね、二つの機構を開発中よ。ひとつは、自動馬車の回る車輪のリズムを使う方式。もうひとつは、魔力を完全に自動走行エンジンからもらって、演奏はオルゴールで完結する仕組み」


なるほど、動力が馬でなくなれば、全く新しい仕組みのエアバッグが成立するんですね。


「自動運転を進めているシヴァ社も--」


そんな略し方あります?

ちなみに正式はシヴァー・オブ・オフロードです。


「--シヴァ社は、自動運転完結型のエアバッグに投資しているわ。共同開発の状態ね」


なるほど。

というか当たり前の話ですね。

この町はシヴァ社が王なので。


「共同開発といえば聞こえは良いけど、二社には開発力や仕事に対する考え方に大きな溝があるわ。だから、現場はグチだらけよ」


え?

もしかして今回の仕事ってグチを聞くことですか?

嫌ですよそんなの。

馬が合わないんならシヴァ社の町になんか来ないでくださいよ。


「でもまあ、モンク言いつつもね、モノづくりが好きな人たちだから、あの人たちもなんとかしたいと思ってるのよ」


あ、そこは真面目なんですね。


「そこで、現場の目線でsxを中心にした仕事改革、これが私たちの仕事よ」


おお、コンサルみたいでかっこよくなってきましたね。


おっと、かっこよさに惑わされて、肝心の自動馬車について混乱してきました。


「自動馬車って、馬を自動で操るんじゃなくて、馬がいなくても自動で走る車なんですね」


それって自動車では?


「どっち開発中だし、ゆくゆくは合体するはずよ」


ってことは、自動自動馬車になるんですかね。





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