第29話 フレーバー
全員が合流しての、最初の戦闘。
「えっと、その全体攻撃に切り札特技を使います!
セッション中に一回だけ使用可能、攻撃の対象をわたし一人に変更で!」
「オッケーです! ではそのタイミングで、力が覚醒して特技を使えるようになったという流れにします!
キャラクターの体にあったあざが光をはなち、力が目覚めます!」
「ええっと、みんなを守る特技を使って、あざが光って、わたしはその力を初めて使って、そんなこと今までできるなんて知らなかったわけですから……!
『み、みんながわたしを守ってくれてるーわたしもなんとかしなきゃーあーっ昔からあるあざから光が出てなんかすごいなんかが起きましたー』」
「この身はロールプレイに乗っかるぞ!
『その力、それこそこの身が探していた世界を救う力じゃ! おぬし、この戦いが終わったらこの身のモノになれ!』」
「あのっ、なんかその言い方、プロポーズみたいなんですけど!?」
「うわぁぁん女神様が人間と結婚なんてイヤでありますぅぅぅ解釈違いでありますぅぅぅ!
たとえ相手が本官だったとしても喜びより解釈違いの方がまさるでありますぅぅぅ!」
「あー、ゲームマスター、拙者はメイド殿のキャラクターに集まった攻撃を『かばう』で」
「あっはい、ゲーム処理は進めましょうね」
「『あの力、闇のエネルギーを一点に引き寄せ周囲を守る光のパワー……!
あたしの中の闇がうずいてる、あの力はきっと、あたしの運命をくつがえす力になる……!』
などとロールプレイしつつ、ワガハイの出番行きますぞ〜!
範囲魔法攻撃、この位置取りなら敵全員が攻撃範囲ですぞ!
『食らうがいいわ、あたしの内よりあふれる闇の力……闇よ
「オリジナルの技名つけおったのじゃ!?」
魔物たちを倒し、戦闘が終了する。
「ここで演出をひとつ入れます。
戦闘中にメイドさんのキャラクターが発した光を浴びたことで、他のキャラクターにもその力の一部が染み渡ります。
メイドさんのキャラクターが持っているあざと同じものが、他のキャラクターにも生じますね」
「メイドよ、あざは体のどの位置にあるんだ?」
「えーっと、場所は、えーっと、左手の甲ですね!」
「むふー! つまり今ワガハイのキャラクターは左手の甲にあざを持ち、闇の力と光の力を兼ね備えて運命に立ち向かうキャラクターとなったわけですぞー!
むちゃくちゃかっこよくなるんですぞー!」
「一応聞くがゲームマスター、キャラクターデータとしては変化はないんだな?」
「はい。少なくとも現時点では、フレーバーだけでデータ上は影響ないです」
それこそライフパスもそうだけど、TRPGではルールやデータに影響しないキャラクター設定をちょくちょく用意する。
極論を言えば、外見とか年齢、性別なんかもそれで強さが変わったりはしないし。
けれど戦闘や判定に影響するデータしかないよりも、いろいろ独自設定があった方が気持ちが上がるし、物語としておもしろくなる。
こういう物語を深めるための設定を、フレーバーと言ったりする。
カードゲームなんかでも言うよね、フレーバーテキストって。
そして今回の場面において、フレーバーを加えたのは。
「この身のキャラクターは、みんなにあざが出たのを見て言うのじゃ!
『ここにいる五人全員が、世界を危機から救う選ばれた者になったのじゃ!
全員で力を合わせて、闇の目覚めに対抗するのじゃ!』」
「俺もロールプレイをしておくか。
『俺はただ力を試せればいい武芸者でしかないが、どうやら何か壮大なものに巻き込まれてしまったらしいな。
ちょうどいい、きみたちと一緒に旅をすれば、もっと手ごわい相手と戦えそうだ』」
そう。キャラクターたちが一緒に冒険をする理由づけのため。
プレイヤーとしては全員で冒険をするのは分かりきっているけど、キャラクターの視点としても同行する理由がはっきりしていた方が、セッションをスムーズに回しやすい。
もちろんそのへんの理由づけはプレイヤーの方で設定することだってできるし、シナリオやメンバー次第、セッションごとにさじ加減が変わるところではあるけれど。
「むっふー! ワガハイのキャラクターは冷めた顔でそっぽを向きつつ、ほんの少しだけはにかむような表情を見せて言うのですぞ!
『あたしは別に、仲間だなんて思わないし、仲間だと思ったりもしない……けれど必要だというなら力は貸すわ、あたしの
「大臣、技名めっちゃ気に入っておるじゃろ?」
うん、こういう技名も、フレーバーだね。
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