概要
同じレズビアンである晴海は、密かに香奈へ恋心を寄せており、思わず彼女にキスをしてしまう。
すると、人魚であった香奈は人間に戻ってしまった。
これは、レズビアンであることに苦しむ香奈と、彼女に恋をし、彼女と共に生きようとする晴海の物語。
(1話3000~4000文字程度)
※作品のテーマ上、性的少数者への差別に関する社会構造を描くために、差別的表現が使われております。精神的ストレスを伴う可能性がありますので、ご自身の判断の上、お読みくださるようお願いいたします。
※筆者はいかなる差別も容認しません。著作で差別を是認するような発言・人物が登場しても、それは物語のテーマ上必要だと判断してのこと
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!愛の形に正解はなし
様々な性の在り方が提示された世の中ですが、未だにそれは受け入れられる物ではありません。
この作品はLGBTの中の『L』、レズビアンである人物が主人公となっています。
誰を愛そうが誰に愛されようが、そんなのは人の勝手なのに、定着した固定概念のせいで、同性愛者は“異端者”扱いされてしまいます。
作中でも、そのような胸が痛む描写がありますが、それはフィクションの中に収まる話ではありません。
甘酸っぱくて、時々苦い。そんな恋の物語でありながら、時折ファンタジーな要素も入り混じってきて、不思議な感覚を味合わせてくれる仕上がりとなってきます。
主人公は周りから見れば『異端』な存在ですから、蔑まれたり…続きを読む - ★★★ Excellent!!!悩める少女たちはそれぞれの答えにたどり着く
同性愛がテーマということもあり、多方面へかなり繊細な配慮がなされた作品です。ジェンダーに関する問題は、現代においてもセンシティブなもの。古事記など神話や民俗学的な観点を絡め、人間から人魚へ、人魚から人間へとめまぐるしく変わることで、レズビアンであることを暴露された香奈の動揺が表現されている点が、巧みな構成を引き立てています。
晴海と香奈はレズビアンですが、困難に立ち向かおうとする晴海、苦しむくらいならそっとしておいてほしい香奈と、その思考は対照的です。香奈の弱さを受け入れられなかったことを晴海が後悔するシーンなど、当事者はもちろん、意図せず香奈の秘密を広めることになってしまったくるみ、同性…続きを読む - ★★★ Excellent!!!同性愛というテーマの元に語られる甘酸っぱい少女たちの葛藤
「同性愛」がテーマになっていますが、本質はもっと広く、少女たちが思春期に持つ心の葛藤が描かれています。
少女たちのもどかしさは、時に幻想的に、時に生々しく表現され、
小説の中に度々綴られる比喩表現は作者の中今透様のセンスが光っていて素敵です。
そして物語は少し不思議なファンタジー要素も含み、神話や民俗学を絡めた展開がとても魅力的です。
とても構成が凝っていて、どんどんと読み進めてしまいました。
自分をさらけ出すことへの不安、人を受け入れることの難しさ。
今を生きる私たちにも共通するテーマでもありますが、希望はいつでもそこにあり、読み終わった後はふわっと優しい暖かさが心に広がる、そんな物…続きを読む - ★★★ Excellent!!!社会が狭量で残酷かもしれなくても
同性愛というものを認められない友人、なんの悪気もなくアウティングしてしまった友人。ある意味これは現代社会が抱える問題の縮図なのかもしれない。
けれどこれはまた難しいところで、認められないことを悪と断じることはまた、人の思考をねじ曲げることに他ならない。
ある意味ままならないそれを美しく描き、そこに古事記の内容を絡めていく。これはそういったことにも通じた作者にしか描けない物語だろう。
私たちは誰を愛してもいい。まさにその通りなのだ。その心は自由で、誰に制限されるものでもない。
私事ではあるが、身近にこの悩みを抱えた人がいる。この物語の結末が希望を灯したものであることを心よりありがたく思います。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人ならざる『印象』を、人らしい『感情』として美しく描いた物語。
若き女性同士の恋愛を描いた物語。悲恋やデメリットの象徴とも言える『人魚』というキーワードを、この題材に絡めた点にセンスを感じます。冒頭から『レズビアン』は、よりにもよって同年代の同性に理解されないという現実を、冷たい潮風が吹き付ける様に、読者に印象付けてくる。そこに主人公とのキスが絡み、物語への期待値を高める事に作用していて、非常に良い。
セクシュアルマイノリティに対する漏洩問題、登場する民話に対する解像度も高く、読み応えがあります。田舎町という閉鎖的な舞台装置によって、ファンタジーでありながら、より現実的なイメージを強める。
一方、(小説執筆するくらいなんで、鳴海は多分そういう人…続きを読む - ★★★ Excellent!!!LGBTQ、伝説、学校、全てが凝縮された現代ファンタジー人魚譚
本作の魅力を一言で表すのはとても難しいです。
自殺した親友が人魚になるという、一見、ライトな昨今流行りの百合小説のような始まりですが、その奥にはとんでもないストーリーが潜んでいます。
舞台となった土地に伝わる伝説と、巧みな主人公たち女子高生の心理描写が、人間が人魚になるというファンタジー要素に説得力を与え、この物語をとてもリアルなものとしています。
人の善意によって人が苦しみ、人の悪意が物語の結末に明るい未来を期待させる奥深いストーリーには脳天が痺れるような衝撃を受けました。
とにかくすごい作品を読んだ、カクヨムには自分の知らない作品がまだまだあるのだなと改めて実感しました。