人ならざる『印象』を、人らしい『感情』として美しく描いた物語。

 若き女性同士の恋愛を描いた物語。悲恋やデメリットの象徴とも言える『人魚』というキーワードを、この題材に絡めた点にセンスを感じます。冒頭から『レズビアン』は、よりにもよって同年代の同性に理解されないという現実を、冷たい潮風が吹き付ける様に、読者に印象付けてくる。そこに主人公とのキスが絡み、物語への期待値を高める事に作用していて、非常に良い。

 セクシュアルマイノリティに対する漏洩問題、登場する民話に対する解像度も高く、読み応えがあります。田舎町という閉鎖的な舞台装置によって、ファンタジーでありながら、より現実的なイメージを強める。

 一方、(小説執筆するくらいなんで、鳴海は多分そういう人物像なのかも……)大人び過ぎなくらい情緒的で、文学的な単語が出てくる地の文をしている為、10代女学生の一人称にしては、結構堅苦しいのでは、という印象を受ける人もいるかもしれません。しかし、物語の空気感や扱っている『同性愛』、『古事記』といった素材を考えれば、これで合っていますし、全体的にとても丁寧に作り上げられた作品です。

 百合の一歩先を行った、息苦しくも生温かい肌触りを感じる、女の子の恋愛を読みたい方に、オススメします!

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