第27話 もう、咲良は諦めた方がいいよ…この環境がよくなることなんてないし…
今のところ、クラス全体に、その噂が広がっているのだ。
けど、陽向汰からした、もう別になんだっていいと思っていた。
あんな噂がバレたっていい。つい最近までであれば、絶対に誰にも晒したくなかったこと。
だが、咲良の裏の顔を、仲間の協力の元、全校生徒にメールを使って拡散させたのである。
等価交換ともいえることだ。
覚悟なんて、とうにできているから問題はない。
今日の朝。誰もいない校舎の一室で咲良から反発され、あんたの秘密をバラすからと威圧的な口調で言われたのだ。
それが原因で、今の環境に至るのだが。そんな中、放課後の教室にいる陽向汰は席に座っていたのだ。
大半のクラスメイトは、帰宅するか、部活に行くかの時間帯。
陽向汰の件もあり、大方、クラスメイトは教室に残っており、少々ざわついている状況。
クラスメイトらの視線は、チラホラと陽向汰へと向けられていたのだ。
だがしかし、陽向汰は堪えていた。
どんなに変な目で見られようとも、何とか耐えきってみると、内心思う。
「お、お前……あの噂、本当なのか?」
クラスの陽キャらが数人ほど陽向汰の周りに集まってくる。
不安そうな表情。
まさか、陰キャのような存在の奴が、どうして、そんなことをしていたんだと言わんばかりの顔つきを、彼らは見せているのだ。
陽向汰は自他が認めるほど、陰キャ寄りの存在である。決して、陽キャ寄りではないことは断言できるほどだ。
「うん……」
「え? 本当か? 咲良が言っていたことって。マジなのか?」
「……そ、そうだよ」
こんなところで嘘をついたってしょうがない。もう、すべてを晒してもいいのだ。他人から何を言われたっていいと思っている。
「まさか……お前がラブホに入って、如何わしいことをしていたなんてな」
「というか、咲良の話によれば、年上の女性と一緒に、ラブホに入っていたって話じゃんか。いつ頃の出来事なんだ? 高校生になってからか?」
「俺にも詳しく」
陽向汰の席の周りに集まっている数人の陽キャ男子は興味津々であった。
陽キャであったとしても、他人の目があると、なかなかラブホなんて入れる勇気を出せないらしい。
むしろ、クラスメイトの陽キャ男子らの瞳は、疑いの眼差しではなく、興味のある顔つきになっていた。
ラブホに年上の女性と入って、色々なことをしていたとか。そういう話で、とにかく盛り上がっているのは男子だけ。
クラスの女子らは、引き気味に、陰キャのようなオーラを放つ、陽向汰を遠くから見ている程度だった。
その噂を公言した咲良からしたら、クラス全員が、自身の見方をしてくれると思っていたのだろう。
が、クラスの雰囲気は半々で、光と闇に丁度良く分かれている感じであった。
「というか、俺さ、その話を聞きたいんだ。教えてくれ」
「それで、どうやって、年上の女性を連れ込んだんだよ」
「俺にも伝授してくれ」
席に座っている陽向汰は、批判よりも、輝かしい男子らの瞳を一心に受けることになったのだ。
そんな状況に、陽向汰は断ることなんてできなかった。
少々、たじたじになってしまう。
「なんで、なんだ?」
陽キャの男子から詰められた話をされ、少々おどおどしてしまうものの。
陽向汰は、彼らの顔を見、打ち明けることにしたのだ。
「俺は普通に誘っただけさ」
陽向汰は平然とした口調で言う。
「本当に、それだけなのか?」
周りにいる男子らからは驚かれてばかりだった。
「でも、何かきっかけはあったんだろ?」
「それは、まあ……」
「どういう流れでだよ」
「……」
陽キャ男子からの問いに、陽向汰は口ごもってしまうが、今まで隠していたことを口にする。
「俺さ……ネット小説を書いていた時期があったんだ」
「ネット小説か? あれか? 異世界転生系の?」
「……それとはちょっと違うけど。一応、ラノベ寄りの作品なんだけど」
陽向汰はジャンルの詳細発言だけはしなかった。
言葉を濁すだけ。
「俺の書いた小説がネット上で、一時的にヒットして知名度が上がったことでさ。とある女性と関わることになって。それで、その女性も小説を書いているらしくて、その小説の題材のために、ラブホに行くことになったんだ。ラブホにいる時の心境とか、エロいモノを見ている時、どんなことを考えているとか。なんか、その女性が小説のネタに使うらしくて……。でも、その女性、かなりマニアックな思考の持ち主だったよ。でも、今は関わっていないけど」
陽向汰は後で疑われないように、その経緯を周りにいる人らに話したのだ。
「そういうことだったのか。そういう子と別れなければよかったのにさ」
「勿体ないな」
「うんうん、そうだって」
陽キャ男子から各々の感想を貰う羽目になった。
「というかさ、咲良はなんで、そんなことを知ってたんだ?」
「そうだって。あと、咲良って、生徒会役員が管理している部費とかにも手をかけていたとかって。聞いたけど。それは何なんだよ」
「俺らの部費が少なくなってたのって。全部、お前のせいだったのか?」
今まで清楚系で優等生風を振舞ってきた咲良のボロが出たことで、特に男子らから反感を買っているようだ。
「わ、私は別に……それは嘘よ。皆に一斉送信されたことは、全部嘘。というか、あのメール、生徒会役員が勝手にやったことだし」
咲良は何が何でも私は悪くないというアピールをしている。
「え? 咲良はなんで、生徒会役員からのメールだって知ってんだ? 俺らも知らないことを、なんで知ってる?」
「あ、い、いや……そ、そうかなって」
教室にいる咲良は、おどおどした口調になっていた。
今まで仲の良かった人からも疑われ、言い返すことなんてできなくなっていたのだ。
咲良は唖然とした顔つきで、親しい同性に助けを求めようとするのだが。誰も、彼女に手を差し伸べてくれる子なんていなかった。
咲良はもう、アウェイ状態なのだ。彼女は泣き目になりつつあったが、誰も咲良に近づくモノはいなかった。
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