クズな彼女と現在進行形で付き合っている俺が、エッチで美少女な後輩から言い寄られている
譲羽唯月
第1話 俺は、美少女でクズな彼女と別れたい…
「あんたさ、私の事、バカにしてるの? この私と付き合えているのに、何、その態度? 今後も、そんな態度を見せるなら、あんたの、あの秘密、皆にバラすけど?」
放課後の部活時間中。
中学生の頃、
だから、高校に入学した当初から陰キャだと悟られないように、立ち振る舞ってきた。その結果、高校一年生の終わり頃にようやく彼女ができたのだ。
金髪のロングヘアスタイル。咲良は、学校の中でもレベルの高い容姿をしており、美少女感あふれる子である。
そもそも、なぜ、彼女から告白されたのかは不明であり、最初は疑ってしまった。
嫌な予感がしてならない。その予感は二週間くらいで明らかになったのだ。
放課後、部室でテーブルを前に、椅子に座り、本を読んでいる陽向汰は、そのことを思い出すと、心が痛み始めるのだった。
「せーんぱい、どうしたんですか、そんなに暗い顔をして」
「んッ」
急に彼女から問われた。
その彼女とは後輩の
同じ部活に所属している女の子であり、人懐っこい印象がある子だ。
茶髪なショートヘアなスタイル。身長はそこまで高くはなく、おおよそ150センチくらいの小柄な女の子。
他の子と比べても、美少女であり、今付き合っている彼女と同じくらいの愛らしさ。いや、それ以上かもしれない。
二人の内面を比べてみた時、断然、後輩の方が好感を持てるというものだ。
「先輩? 何を考えていたんです?」
「ちょっとな。色々と……」
「そうなんですか? でも、今は部活中ですよ。もう少し真剣に取り組んでくださいね」
隣の席に座る和香から指摘され、意味深な感じにウィンクされたのだ。
部活の時間帯。
陽向汰は、高校一年生の時から読書部という特殊な文化系な部活に所属している。
今、話しかけてきた隣の席に座っている女の子は、今年入学してきた後輩。
後輩と関わり始めて、大体一か月くらい経った。
何となく、親しく話せるレベルの間柄である。
部活といっても、本を読んだり、定期的に、図書委員会として放課後や昼休みの時間帯に活動する程度。
今日は図書委員としての活動はなく、二人っきりの空間で一緒に本を読み。その感想を考えていた。
図書委員としては、新しく届けられた本に一度目を通し、ポップみたいなものを作ったりする。
今はその作業のために、本を読んでいるのだ。
本来であれば、もう一人部員がいるのだが、今日は学校自体を休んでいるらしい。
「というか、先輩は何を読んでるんですか?」
「これか? これは、ラノベっていうか」
「……美少女が登場する感じの本ですよね?」
「まあ、あながち間違ってはいけないけど」
「あれ? 先輩、彼女いるんですよね?」
「う、うん……」
「リア充みたいな感じなのに、どうして、そういう本を学校の図書館宛に注文したんですか?」
「それは、まあ、元々、ラノベが好きだったということもあるんだけど」
陽向汰は後輩の和香から視線をそらし、気まずげに小声で言った。
「もしや、その彼女と色々あったんですか?」
「……」
陽向汰はラノベを一旦閉じ、押し黙った。
今、付き合っている彼女からの嫌なセリフが脳内に戻ってくるようで、心が締め付けられるように苦しくなったのだ。
「……先輩? 大丈夫ですか?」
「な、なんでもないよ……」
陽向汰は後輩に心配をかけないように、多くは語らないことにした。
陽向汰は一旦、和香との会話に区切りをつけ、再びラノベを見開いて読み始める。
あの嫌な彼女から距離をとって、ラノベを読んでいる時が一番リラックスできる瞬間なのだ。
どうして、あんなクズみたいな彼女と付き合うことにしたのか。本当に意味不明である。あの当時、彼女の内面を読み取れればよかったのだが、陽向汰は女性経験に疎いのだ。
そこまで女の子の本質を見抜くことなんてできなかった。
中学時代は陰キャであり、女の子とまともに関わる機会が乏しかったのが、一番の原因だろう。
今の自分を想像すると本当に悲しくなってくる。どうにかしようとしても、今付き合ってる彼女からは弱みを握られており、なかなか誰にも相談できないのだ。
「先輩? なんか、様子がおかしいですよ? やっぱり、何か隠してますよね? 私、相談に乗りますよ? 本当に」
和香は積極的に距離を詰めてきた。
彼女の発達したおっぱいが、制服越しに伝わってくるのだ。
……これって?
もしかして、脈ありなのか?
ま、まさかな……。
そもそも、和香とは、部活での繋がりしかない。
単なる先輩と後輩の間柄であり、そこまでたいそれた関係じゃないのだ。
でも、隣を見ると、和香が親密な態度であることがわかる。
なんでもいいから、先輩のために何かをしたいといった瞳を、彼女は陽向汰に向けているのだ。
咲良からは口止めされているものの、和香の問いかけを無下にもできない。
多分、今通っている高校で、一番親密になって話しかけてくれるのは後輩だけである。
一応、こっそりとだけ、相談してみようと思ったのだ。
「あのさ、一つだけ事前に言っておくけど。今から言うことは絶対に、誰にも言わないって約束できるか?」
陽向汰は隠し事を話すように、こっそりと彼女に確認を取る。
「はい。私は口が固いので問題はないです」
「だ、だよな」
和香は誰かに、なんでもかんでも告げ口をするようなタイプではない。陽向汰は、この部活に所属してから、そういった彼女の事情を把握していた。
陽向汰は一呼吸をついてから、和香の方へ、体の少年を向けたのだ。
「俺さ……今、付き合ってる子から、脅されてるっていうか。表向きは普通に付き合ってる感じになってんだけどさ」
「……脅されてるんですか?」
和香は同情するように、陽向汰の右手を両手で握ってきたのだ。
「先輩。そこまで追い詰められていたんですね。私、初めて知りました。先輩、私にできる事ありますか?」
「……あまりないかも……」
陽向汰は消極的に呟いた。
陽向汰は思う。
あの面倒で内面クズな美少女と距離を置くなんて無謀だと。
和香には相談したものの、実際、どうにもできないだろうと思い、陽向汰は頭を抱えてしまう。
「先輩、安心してください。私が何とかします。だから、元気出してください」
「え? 何とかなるの、か?」
「はい」
和香はなぜか、ハッキリとそう返答した。
何かしらの作戦があるのか?
そう思いつつ、真剣な瞳を見せる後輩の次の発言を伺っていた。
「……」
「……」
「……えっと、作戦は?」
「え?」
陽向汰の発言に、和香は素っ頓狂な声を出す。
「えっとさ、作戦があって、今の発言をしたんじゃないのか?」
「私はただ、先輩のために何かをしたかったので、その……勢いで、まあ、作戦については今から考えますから」
「ほ、本当に大丈夫か?」
「大丈夫です。私に任せてくださいって。でも、一先ず、どんな人と関わっているか、教えてくださいね。作戦はそこからです」
和香は自信満々に胸を張って言うものの。陽向汰は、まだ、安心はできなかった。
不安さが残るが、他に相談できる人なんていない。むしろ、今の陽向汰にとって、後輩の和香こそが唯一の希望。
陽向汰は唾を呑み、緊張した面持ちで後輩の様子を伺う。
「でも……一つだけ、私からもいいですか?」
「なに?」
「もし、その人と別れられたら、私と……付き合ってもらえませんか?」
頬を紅葉させている和香。彼女は不意を衝くように、告白に近い発言をしてきたのだった。
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