第29話 スズメバチ

 俺は、スズメバチに転生した。目的は、中学のときに俺をいじめた中ノ瀬を殺す事だった。

 今でも忘れはしない。あれは中学2年生の事だった。机の中に一通の手紙が入っていた。裏を見ると、あゆみよりと、書いてあった。城山あゆみは、俺が好きだった女の子であった。手紙の中には、話があるから空き教室に来て欲しいとだけ、女の子の字で書かれていた。

 俺は、指定の時間に空き教室に行き、あゆみを待った。しかし、そこに現れたのは、中ノ瀬だった。そして奴はこう言った。「だーまされた!キャハハ!」

 それから、奴の手先が10人ほど教室に乗り込んで来て、俺は袋叩きにされた。

 あのときの、中ノ瀬の醜い微笑は今でも忘れられない。


 俺は、中ノ瀬の実家へ飛んだ。あれから随分時間が経っているから、就職でどこかへ行っているかもしれないとも思ったが、ダメ元で奴を探した。

 いた!老けてはいたが、その顔には、醜い微笑を思い出させた。中ノ瀬はゲームに夢中だ。

 スズメバチの殺傷能力については自分も、知っていた。一度刺されても死ぬ人は死ぬらしいが、殆どは、2度目に刺され、ショックで死ぬらしい。しかし、デメリットが一つある。2度刺した、スズメバチは死んでしまうということだ。同士討ちというわけだ。

 俺は憎しみに駆られ、まずは1度目の刺しにかかった。中ノ瀬の首に向かって突撃した。ゲームに夢中の奴を刺すのは容易かった。

 「いってーーーーーーーーー!」

奴の声が部屋に響き渡った。早く、2度目の刺しを終えなければ、、、。と思ったが、1度目の針を刺すと、体力をかなり消耗するらしい。

 中ノ瀬はホウキで応戦してくる。

 俺は、薄れゆく意識で、中ノ瀬の後ろに回り、首筋に向って2度目の刺しを終えた。

 中ノ瀬は倒れた。全身が震え、口から泡を吹き、しばらくすると奴は死んだ。

 そして、俺も息絶えた。

 そしてまた、天使が現れ、「次の転生行ってみよう♡」と言って、また、俺は神の座へ連れて行かれて行くのであった。

 中ノ瀬の死体を見て、俺はこう思った。ここまでする必要があったかな。あー、あ。俺、人殺しちまったよ。やっぱ、こんな体になっても罪悪感ってのは感じるんだな。

 まあ、元、人間だからな。そうつぶやきながら、人を殺すのはもうやめようと心に誓うのであった。

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