第16話 まなぶさん

 あおいは、いつものようにドラックストアでお酒を10本ほど買い、近くのタバコ屋でショートホープを買った。帰る途中、横断歩道を渡ろうとすると、信号機が点滅し始めた。私は、この体では間に合わないかとも思ったが、思い切って走ってみようかと思った。右足が思うように動かなかったが、あおいは、小走りすることができた。

 「やった!やればできるじゃん、私。」と、満足感に浸った。息を整えていると、私の肩を叩く人がいた。振り向くと、そこには、りえと心中しようとした時に助けてくれた、ハゲデブ中年男が立っていた。

 あおいは、りえの体でも無いのに何故私に声をかけるんだろう?と疑問に思った。

 あおいは、中年男の言葉に耳を疑った。

「俺、まなぶ。」

まなぶって言ったら、私に乗り移って、水を飲んでくれた人、、、。え?しかも、私が、りえの体を使って自殺しようとしていたところを助けてくれたのも、まなぶさん?

私は、まなぶさんに2度も助けられたってこと?戸惑うあおいだったが、

「2度も助けて頂いてありがとうございました。」と告げた。

「2度?」首をかしげるまなぶであったが、

「あなたには、きっと生きているワケがある。だから、神様は、死なせてくれなかったんだね。俺は少なくとも、あなたの味方ですよ。」そう言って、まなぶさんは去っていった。

 あおいの目には涙が溢れた。そして、りえの顔が浮かんだ。りえに会いに行ってみよう。あおいは、公園に住んでいるホームレスのおじいちゃんに、お酒をあげて、シラフでりえの家へと向かうのだった。

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