第13話 神の座

 あおいはようやく頂上へと辿り着いた。タバコのせいだろう、息切れが激しかった。「あはは。お前、マジで登って来たの?ウケる〜。」と天使が近づいてきた。マジギレしそうになったが、疲労のほうが勝っていた。

「1名様。神の座へごあんな〜い。」と天使が言うと、周りが光で包まれた。次の瞬間、あおいは、神の座?に立っていた。そこには、人のようなものでもなく、動物のようなものでもなく、虹色のような光景が広がっていた。「神様!あおいを連れて参りました。」天使は急にかしこまった。

 「下がって良い。長助。」神様の声はエコーがかかったように響いたが、とても心地よい声だった。あおいは“あいつ、長助っていうの?ビジュアルに合ってね〜。(笑)”と思いながら、神様の言葉に耳を傾けた。

 「あおい。そなたは、自分の体へ戻りたいか?」

あおいは、「戻りたいです!」と大きく返事をした。

 「なぜ?世界なんてクソじゃないか?憎しみあい、蔑みあい、殺しあい、裏切りあい、あるのは苦しみ、絶望、悲しみだけではないか?私なら、そなたをその苦痛から救う事が出来る。無になったほうが良いのではないか?」

 あおいは引かなかった。「戻りたいんです!」

 神様は、あおいにこう告げた。「そなたを私が、体へ戻したとしよう。しかしな、そなたの体は動かぬぞ。それでも戻りたいと申すか?」

 あおいは再び言った。「戻らせてください。」

 「分かった。そなたの望み叶えてしんぜよう。」

 「ありがとうございます!」あおいは涙声でそう言った。あおいは、りえの事が、気がかりで、りえについて神様へ尋ねた。

 「心配せんでもよい。りえは、まだ死んではおらん。薬を吐いておったな。しかしな、後、100錠程、胃には残っておった。今、りえは胃洗浄を受けたが、意識不明の状態だ。私は、そなたの次に、りえに“猶予”を与えようと考えておる。」

 あおいは、安堵した。りえならきっと3日で強くなれる。そう信じた。

 神様は言った、「そなたを戻す前に、一つ伝えておきたいことがある。そなたは、奇跡的に助かったとでも思っておるのか?それは違う。私が猶予を与えた、まなぶという男のおかげじゃ。そなたは、気を失って覚えとらんじゃろうが、その時、まなぶは、そなたの体に取り憑き、庭にあった、水道水を飲み続けた。アルコールを薄めようとしたのじゃろう。そなたが生きれるのは、そなたの力だけではない。そのことを忘れるではないぞ。」

 あおいは驚きを隠せなかった。「はい。」

と言うと、あおいは虹色の神様へと引き込まれていった。

 目を開けると、そこは病院のベットの上だった。私は、生還した。

 「あおいちゃん!」母の涙が私の頬に落ちた。横では父が声を出して泣いていた。そして、私も泣いた。

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