第7話 救済

2日目


 ホテルで朝食を済ませると、この女の体にも飽きたので、再び幽霊となり、上空から街を見下ろした。あおいは、ふと思った。他の人間に取り憑いて、もし自殺したらどうなるんだろうと。取り憑かれた人が死ぬの?私が死ぬの?

 考えていると、またあのちっちゃな天使が私に近づいて来た。「見てたで〜。お前ホンっとバカだね〜。あと2日やで。お前がせんといかんのは他にあると違うか?神様が待って下さるのも、あと2日やで〜。まあ、きばりや〜。あー、かったる。」そう言ってちっちゃな天使は去っていった。

 なんで関西弁やねん?私が本当にするべきこと?わけがわからない。まあ、こんな私にも夢というか、こうなりたいってものはあった。何かしら人の役にたちたい。そうすることで、自分の存在意義を持ちたいと思っていた。あの頃は若かった。なんにも分かってはいなかった。本当は人生なんかクソで、なんの意味もない。自分なんてミジンコ以下なんだってこと。

 あおいはひらめいた。よし。私が惨めな奴を救ってあげようじゃないの!方法は一つ、取り憑いて、このクソみたいな世界からおさらばさせてあげるのよ。いっぱいいるでしょ?こんな世界、クソみたいって思っている奴ら。一緒に、心中しましょう。そうだな〜。いじめられている子。そうしよう。

 あおいは、中学時代を過ごした母校へと足を運ばせた。ちょうど休み時間中だった。一人の女の子が目に止まった。3人の女子に囲まれている。一人の女子が言った。「おい。財布出せよ〜。」女の子は、渋々財布を出した。「ちぇっ。こんだけしかねーのかよ。今度、万札持ってこないと殺すぞ。」そう言って、女の子の腹を蹴った。女の子は、泣きながらうずくまった。他の生徒は知らんぷり。

 あおいは決めた。この娘に取り憑いて、死のう。これは、あの娘への救済、そして私への救済。気が付くとあおいはその娘の手を握りしめていた。“ドクンッ”

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