第24話 共感者

 まさるとのデート当日、あおいは、気合を入れてオシャレしていた。待ちあわせ時間より20分前に、時計台に着いてしまった。しばらくすると、「よっ!」とまさるに声をかけられた。「待たせてごめん。じゃあ、行こうか?」と言われ、商店街へと歩き出した。初めてのデート、あおいは緊張していた。でも、ゲームセンターに行ったり、クレープを食べたり、プリクラを撮ったりしているうちに、楽しくなってきて、あおいは、まさるに心を許すようになっていった。まさるは、キーホルダーを買ってくれた。「お揃いな!」と言って、偽りのない笑顔を見せてくれた。あおいは、ドキっとした。しばらく歩いて、公園で休むことにした。まさるは、自販機で、コーヒーを買ってきてくれた。あおいは、あー。タバコ吸いてー。と思いながら、いかんいかん、デートに集中、集中!とタバコへの思いを払拭した。まさるは、コーヒーを一口飲むと、急に真面目な顔になって、あおいにこう尋ねてきた。「さちこちゃん。何で、この前、学校の屋上から飛び降りようとしてたの?」あおいは不意をつかれてしまった。さちこが、自殺しようとしていた?そして、まさるが、それを止めた?何故さちこは自殺しようとしていた?さちこは特にいじめにあっていた様子はなかった。あおいは頭の中がパニックになってしまった。あおいは、自分が自殺しようとした、あの日の気持ちを伝えてみることにした。「私は、もう、この世界がどうでもよくなってしまったの。だって、こんな世界クソじゃない!お金?違う!地位?違う!平和?違う!違う!なんにも無いの、、、。私が生きるワケが、、、。」27歳のあの日、自殺未遂をした自分を思い出し、あおいは涙をポロポロと流した。まさるは言った。「さちこちゃん。僕も同じだよ。」そう言ったまさるの笑顔はとても優しかった。そして二人は、付いたか分からない位のキスをした。あおいのファーストキスは、ほろ苦いコーヒーの香りがした。

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