第2話 病院

 気がつくと、そこは病院のベットの上だった。横では、母が泣いていて、父は難しい顔をしていた。トイレに行きたくなって、体を動かそうとするが、思うように動かない。ようやくトイレでおしっこをすることができたのだが、おしっこは、血のように赤かった。その日は、とにかく意識が朦朧としていて、眠りについた。

 次の日、朝目覚めると、体が動かない。声も思うように出すことが出来なかった。母の目は、泣きはらして、腫れ上がっていた。

 しばらくすると、主治医が往診に来た。告げられた病名は、横紋筋融解症という病気だった。アルコールの血中濃度が、ずば抜けて高かったという。私は、死ねなかったことに対し、自分を呪った。私は、このまま動けないままだと思うと、絶望しかなかった。それから、私の過酷な病院生活が待ち受けていた。

 1週間程は、食べることはできず、水分のみ摂取していた。それから、食事が開始になったのだが、はじめはミキサー食であった。ご飯類は食べることができず、甘いデザートのみ、体が、受けつけた。

 おしっこは最初の晩だけ出て、次の日からは出なくなり、人工透析が始まった。

 一番辛かったのは、痰の吸引だ。痰が絡むと自分では出すことができず、吸引機を使って取り出す。それが、くるしかった。

 ある日、私は、血を吐いた。血が止まらなかった為、どこかからか出血しているのではないかとのことで、カメラを飲むことになった。看護師が慌ててストレッチャーを持ってきて、私をカメラ室へと向かわせた。しかし私は、想像以上の血が体内で出血していたようで、カメラ室へと向かう途中で、気を失ってしまった。その時、私は、なんとも表現し難い幻のようなものを見ていた。これが例に言う、三途の川というものか。これでやっと死ねるのだと安堵した。

 その幻が消えたかと思ったら、私は、空の上に立ち、病院を見下ろしていた。

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