第5話 孤独な女

二人目


誰でもよかったとはいえ、無精髭生やして、作業服ってのは、いくら私だって恥ずかしい。私は、ルックスに自信がなく、27にもなって彼氏は一度も出来たことがない。次は美女にでも乗り移ってみるかと、再び、物色を始めた。真っ赤なワンピースに、ハイヒール。口紅も真っ赤、ロングパーマをかけているその女は、すれ違えばどの男でも振り返るであろう美女だった。よし、この女に決めたっ!と思い、早速その女の手を握った。“ドクンッ”入れ替わった瞬間、もうすでに、男どもの視線に気がついた。スロットで、時間を潰して、時刻はもう18時を回っていた。よく通っていた居酒屋で酒でも飲もうかと、足を運んだ。「いらっしゃいませ~。」店員が大きな声で挨拶する。私が来たときとはまるで違う目の輝き。

 私は、カウンターに座り、焼酎のロックを頼んだ。このくらい一気飲み、、、と、グラスに口を付けた。しかし、飲めない、、、。飲みたくない、、、。焼酎の強烈な匂いが、私が自殺未遂したあの日の事をフラッシュバックさせた。喉を通らない焼酎を無理に胃へと流し込んだ苦痛が蘇ってきたのだ。気持ちが悪くなって、店員に水をもらった。ところが、その水さえも飲めない。水が焼酎に見えて飲めないのだ。私は吐き気がしてトイレへと駆け込んだ。でも、何か飲まなければと、オレンジジュースを注文した。オレンジ色のその液体は、受け入れることができた。

 店を出て、どこかホテルでも泊まろうかと歩いていると、飲んだくれのオヤジ達が私の体を舐めるように見ている。気持ち悪い。美女に乗り移ったら、何か世界観が変わるのではないかと少しだけ期待していた。

 「孤独だ、孤独だ、孤独だ、、、。」そうつぶやきながら、ホテルにチェックインし、1日目が終わった。

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