第5話 

図書室でゆっくりしすぎてしまった。

来た時は数人生徒がいたが、今は私1人になっている。


いつの間にはあと3分で朝礼の時間になっており、少し急いで教室に向かった。



後ろのドアから教室に入る。

別にこのクラスの人達からいじめられている訳ではないが、教室に入る時にいつも少し緊張する。


まだ先生はいなかった。


ほっとしたまま、自分の席に向かって歩き出した。

先生が来ていないからかまだ教室は話し声でにぎやかである。私は静かに席に着き、再度単語帳を開いて勉強を始めた。


周りに人がいるからか、単語が頭に入ってこない。

こんな状況で勉強しても効率が悪いと思い、単語帳は開きつつ、周りの会話に聞き耳を立てることにした。


「昨日食べ過ぎてまだお腹いっぱいなんだけど、やば。今日お昼少なめにしようかな。」

「いいじゃん普通に食べれば。お昼になったらお腹すくだろうし、全然太ってないじゃん。」

「そうだよ。ほら見て、腕とかやばい細いじゃん。」

「いやいや、見えてない部分がすごいんだって~。」


隣にいる女子グループが太っている太っていないで盛り上がっていた。

この子達は1人になった時にどんなことを考えているんだろう。

そんなことを考えていると、突然その女子グループが話しかけてきた。


「ねえ、櫻井さんってさめっちゃ細いじゃん。なんか気を付けていることとかあるの。」

「確かに~。教えて教えて。」


「え、あ、特に何かしていることはないんだけど。夜寝る前にマッサージはしてるかな。」

急に話しかけられて、どもってしまった。


「マッサージねえ。良いっていうよね。変に筋肉つかないし。」

「でも続かないんだよね。」


「多田(ただ)さん達みんなほっそりしてるじゃない。私はマッサージしないと脚がむくんじゃって。何もしてなくてその体型を維持できるのすごく羨ましい。」


「え~、そんなことないよ。ねえ。」

「そうだよ。絶対むくんでてもたかが知れてるでしょ。」


そう言いつつも多田さん達は自分たちの体型を褒められて嬉しそうにしている。


女子は褒めておけば角は立たないし、実際多田さん達は皆すらっとしているため気にすることはないと思う。


その後も程よく会話に入りながら、先生が来るまでおしゃべりを続けた。




あまり人と関わりを持ちたくないと思ってから当たり障りないように過ごしてきた。この過ごし方をもっと前から習得していたら過去はどうなっていたのか、ふと考えてしまった。

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