第25話

なんだか熱が上がってきている気がする。そのせいか周りの音が聞こえにくい。


でもそんなことどうでもいい。とにかくどこか遠くに。


そう思いながら歩き進めていくと小学校の前まで来てしまった。


私にとってここはただのトラウマだ。来たくないはずなのに、一番忘れられなくて、今もここにたどり着いてしまっている。結局戻ってくる場所はここで、戻ってくるも何もあの時から私はここから動けていないのかもしれない。


今は授業中なのだろうか、体育館の方からしか小学生の声が聞こえない。

授業中といえば、安達さんたちも授業中は分かりやすく何かしてくることはなかったから少し安心できる時間だった。

何度か窓際の席になることがあったが、窓から見える海が綺麗だった記憶がある。


特に夏の午後は太陽が海に反射してキラキラしていて、午後のゆっくりした時間の流れと教室の空気が眠そうな、あのまどろんだ雰囲気とが相まってとても心地よかった。


そうだ、海にしよう。

あの綺麗な海の中で消えたい。


そして私は海に向かって歩き出した。


小学校の裏に海があるため、裏側にまわり、海に続く横断歩道を渡る。


あと少しだ。あと少しで終わる。


熱のせいか頭がぼーっとする。


この感情がきっと一時のものだということは分かっている。


熱で考えがまとまらないはずなのにどこか冷静な自分もいる。


堤防の扉をあけ、砂浜を歩く。

なんだかんだお昼を過ぎる時間になってしまったため砂浜が暑い。


お母さんはお仕事は終わっただろうか。学校から私が早退したと連絡はいっているのだろうか。

そしたら今頃心配しているのだろうか。


いや、そんなことももう考えなくていいか。


私はもっと直接温度を感じたいと思い、履いていたローファーと靴下を適当に脱ぎ捨てた。


暑いなあ。でもなんだか気持ちいい。


どんどん波の方へ近づいていき、とうとう脚が海に入った。


ああ、夏とはいえ、もう終わりの方だからか、海は冷たかった。


でも歩みは止まらない。


水死なんて前の私なら絶対に怖くて、考えはするが行動になんて移せなかったはずだ。

それが今はなんの感情もわかない。


波の音ってもっとするのかと思っていた。


私にぴったりのとても静かな幕引きだ。


ゆっくりと、ゆっくりと、身体が海につかっていく。


小さな頃から来ている海だから知っている。

この海は途中で深くなるのだ。

そのため遊泳は禁止されていて、大人たちは絶対に入らないようにと子供にうるさく言っている。


もうお腹のあたりまで海に入っているためそろそろ深いところにくるんじゃないか。

頭までつかったらいったん水の中で呼吸を止めてみよう。

でもきっと苦しさが勝って、顔をだしてしまうかな。


そしたらどうしよう、泳げるところまで泳いで体力を消耗して溺れようか。


いや、それだと偶然浜に来ている人に見つかってしまうかもしれない。


潜れるだけ深く潜って息が続かなくなるだろうから、そしたら自動的に溺れ死ぬだろう。本能的に海上に向かおうとするかもしれないから極力深く潜ってしまおう。


そんなことを考えていたら、ガクンッと突然足場がなくなった。

深いところまできたのだ。

驚きで顔を出しそうになる。


しかし、ああ、ここが深くなる地点か。

と理解すると私は私の重さで海の底へと落ちていっ

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