第24話
高校の最寄り駅には既に櫻井らしき人はいなかった。
俺達が少し出遅れたから既に電車で帰ったのかもしれない。
こんなにも電車が遅いと感じたことはない。
本当に体調が悪くて家のベッドで寝ててくれ、と電車でひたすら願っていた。
多田や雅人、峯達も誰も何も話さず、ただ地元に着くのを皆そわそわと待っていた。
「着いた。」
そう呟いて俺は電車のドアが開いたと同時に肩を滑り込ませるようにして外に出た。
早く、櫻井の姿を確認しないと安心できなかった。
後ろから雅人達が付いてきている気配を感じながらホームを走り、改札を抜ける。
もしかしたら駅にまだいるかもしれないから少し、周りに目を向け、探してみる。
通勤通学のラッシュでもない朝の変な時間だったため、人はそんなにいない。
ただ高校生数人が駅前でたむろっていた。
制服を着ていたので思わずそっちに目を向けるとその中の1人と目が合った。
「あれ?神原君じゃん。久しぶり。覚えてる?うわー、今日は懐かしい人によく会うなあ。」
目があった人物はそう言いながらこちらに近づいてきた。
「後ろの人は友達?てかまじ久しぶりじゃん。前のまっつん家での遊びも来なかったし。私、来るかと思ってちょっと期待しちゃってたのに。」
安達だ。俺はすぐに誰だかわかった。でもそれよりも気になることがあった。
「懐かしい人によく会うって誰かにあったの。」
思ったよりも低い声がでてしまった。
「。。。なになに、どーしたの?後ろも含めなんか雰囲気悪くない?後ろの人とかはじめましてのはずなんだけど。」
一瞬安達の顔がこわばったのを俺は見逃さなかった。
「そんなこといいから。誰に会ったのかって聞いてんだけど。」
そういうと安達は俺を少しの間見つめてから、一度ため息をついて
「櫻井」
と言った。
「お前、櫻井に何か変なこと言ってないだろうな。てかその櫻井はどこにいんだよ。」
「あーっもう、うるさいなあ。むっかしから神原君は櫻井のことばっかり。そうだよ櫻井にさっき会ったよ。また昔みたいに遊ぼうよって誘ったのに、あいつ私のこと無視してどっか行ったんだよ。」
「どっかってどこだよ。」
「そんなの知るわけないじゃん。」
「ねえ、神原、私この子と話したいことがあるの。だから神原は先に行って櫻井さん探してきて?んで場所分かったら連絡して。すぐ行くから。」
突然俺たちの会話に多田が入ってきたから驚いて多田の方を見た。
「何よ?いいでしょ、別に。私にも色々あんの。ほら、はやく、行った行った。峯達も櫻井さん探しに同行しなよ。人が多いに越したことはないし。」
そう言って多田は手をふりふりして早く行けと促した。
「。。。うんっ。そうだよね、何か急いだほうがよさそうだよね。」
「うん、私らは分かれて櫻井さん探そう。」
そういって峯達はグーグルマップでどのあたりを探すか話し合い始めた。
「待って、俺は多田ちゃんといるわ。何かあの子危なそうだし。」
雅人は最後の方だけ俺だけに聞こえるように喋ってきた。
俺はとりあえず早く櫻井を見つけたかったため、雅人に「分かった。また連絡する。」とだけ伝えて、峯達と櫻井探しに向かった。
櫻井探しといってもどこに行ったか分からない。
まずは一番いそうなというよりいてほしい、櫻井の家に行ってみたが、チャイムを押しても誰も出ず、鍵もかかっていたため、他の場所を探すことにした。
地元の人がよく行く公園、スーパー、図書館まで探したが、中々見つからない。
図書館の近くに小学校があるが、そこは櫻井にとって嫌な記憶しかないのであまり近づかないかもと思ったが、念のため小学校付近も探してみた。
「神原のところ学校と海の距離感バグってない?めっちゃ青春じゃん。」
「てか堤防高すぎな。」
峯達がそんな話をしているため、堤防のほうに目を向けた。
「何か昔大きな津波がきて、大変だったんだって。だから高い堤防を作って今後はそんなことが起こらないようにってしてるみたい。」
話しながら堤防の扉が開いていることに気付いた。
よく犬の散歩で扉が開いていることがあるため、あまり深く考えず一度海の方を扉の向こうからのぞいてみた。
櫻井がいた。
海に入って奥の方に向かって歩いていた。
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