第10話

午後の授業開始時間が近づいていたため、俺達は教室に戻ることにした。


「神原君達は先に教室に戻ってて。私、お手洗いに寄ってから戻るね。」

櫻井はそう言って、俺達から離れていった。




「いや~、櫻井さんって高嶺の花って感じするよな。同級生の女子が子供に見えるもん。」

雅人は謎の余韻に浸っている。


「まあ、確かに男子が一度は好きになりそうな感じはあるよな。」

「おっ。その言い方。もしや和もその経験ありか。」



すごくにやにやしながらこっちを見てくる雅人の視線は無視しながら

「どうかな。忘れた。」

と答えた。


「絶対あるじゃん。その感じ。え、いついつ、もしかして現在進行形っ?」

「はい、この話は終わり。ほら、教室ついたぞ。自分の席行け。」



まだ話足りなそうな雅人だったが、しぶしぶ自分の席に戻っていった。




俺が雅人を気に入っている点がこの程よく空気をよむところだ。

雅人は俺と櫻井の話を聞きたがるが、無理に深堀はしない。


だから俺は雅人といられるんだろうな。




そんなことを思いながら、俺も自分の席についた。


屋上での暖かさがまだ身体に残っていて眠い。


俺は授業が始まるまで仮眠をとることにした。

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