第29話

結局入院することになってしまった。


あの後病院についてから熱が上がって、意識が朦朧としてしまい、それ以降の記憶があまり思い出せない。


起きたら病院のベッドの上で、横にお母さんがいた。

私が起き上がろうとすると、私に気付いたお母さんが肩を抑えてきて起き上がれなくしてきた。


”寝てなさい。心配かけて。”


そう言ってタブレットを見せてきた。


”先生呼んでくるわね。”


母はタブレットを棚の上に置いて部屋を出て行った。


あんな顔のお母さんを見るのは初めてかもしれない。悲しそうな怒っているような。


当たり前か。娘が自殺未遂だもんね。


病院の天井を眺めていると先生が覗き込んできた。


その後は色々と検査を受けて、とりあえず3日間は入院することが決まった。


お母さんとはじっくり話すことができた。


”こんなにしんどかったとは知らなかった。ごめんね。”

”小学生の高学年くらいの時に吉乃ちゃんからいじめられてるって話されたじゃない。でも無理になったらちゃんと言うからって言葉に甘えて、何もしなかった。吉乃ちゃんはそこらへんしっかりしてるから本当に教えてくれると思っちゃってた。まだ小学生で子供なのにね。”

”今回も気付けなくて。神原君たちがいなかったらどうなってたか。”

”本当にごめんなさい。”


お母さんはとても罪悪感を感じていた。

言わなかった私が悪いのに。お母さんはなにも悪くないのに。


そう思うと今まで泣かなかったのに涙がでてきた。


”ちがうの。謝るのは私の方。お母さんがいつも通りにいてくれたから保てたの。家では普通でいられたの。”

”お母さんが大好きだから。そんな顔させたかったわけじゃないのに。自分だけが楽になる方をとろうとしちゃってごめんなさい。自分勝手なことしてごめ”


ぎゅうっと抱きしめられた。


母は泣いているようだった。


私もきっと声が出ていたら病室に声が響いていただろう。





神原君達もお見舞いに来てくれた。


何を話しているかは聞こえないが、皆楽しそうにおしゃべりしているのを見ているだけで明るい気持ちになった。


神原君は一冊のノートをくれた。

これ何?って顔で神原君を見ると神原君は横を見ながら、携帯の画面を見せてきた。


”交換日記てきなやつ。次来る時までになんか書いといてよ。退院してもすぐには学校これないだろうし。”


私は分かったという意味も込めてノートを抱きしめてほほ笑んだ。




このノートは一生私の宝ものとなった。



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