第19話

私は自分の世界を守ろうとしてしまった。


だから、罰が下ったんだ。


神原君の席に近づくと、途中で気配に気付いたのか、神原君が机から顔をあげた。


机にはプリントが置かれていた。


今日国語の時間に提出するはずだった宿題をやり忘れたから、今日中に出すように言われていたのだ。


目の前に立った人物が私だと確認すると、神原君はまるで石になったかのように固まってしまった。


ただすぐに周りをみて何かを確認してた。

そして次には何か覚悟を決めたような目をしていた。


「あの、ちょっと今いい?」


「。。。いいけど、ここででもいい?」


久しぶりにこんな近くで神原君の声を聞いた気がした。

それだけでこれからすることに罪悪感を覚えてしまう。


「私はいいよ。前の返事なんだけど。」


「あ、それについてなんだけど、俺の方から先にいい?」


神原君の声が少し大きくなったような気がしたが、気のせいかもしれない。

私の斜め後ろの方にいるれいちゃんの様子は分からない。

ただこちらの様子を伺っているような気配は感じる。


「え、うん。もちろん。」


「前のあれ、なかったことにして。正直今、なんとも思ってないんだよな。」

「なんならいてもいなくても平気ってくらい櫻井のことなんとも思ってない。」







そして私の世界は壊れた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る