概要
聖王歴1827年寄贈「アンナと幸福の庭」――親愛なる友ドゥセルに捧ぐ。
『僕』こと『ドゥセル・サイレントビナー』は、しがない錬金術師見習いだった。
聖王歴1927年10月末日、僕は死んだ。
単純な事故死だった。伝説の霊薬『エクリサ』の調合のさなか、爆発を起こしたのだ。
身の丈に合わぬ錬成のせいで、死んだ。それはまあ、実力不足の結果だから仕方ない。
だけど、誰も救えず、結果も出せずに死んだことだけが、心残りだった。
そんなふうに思ってしまったからだろうか。
『次』に目を覚ました時、僕の前には『死神』がいた。
「起きましたね。さあ、あなたのたましいの名を教えなさい」
命令を下したのは、『死神』――否、銀髪の美しい少女だった。
混乱しながらも僕が名前を口にすると、少女はにこりとすることもなくこう告げた。
「幸福の庭にようこそ。あなたは死の恐怖から自由になれまし
聖王歴1927年10月末日、僕は死んだ。
単純な事故死だった。伝説の霊薬『エクリサ』の調合のさなか、爆発を起こしたのだ。
身の丈に合わぬ錬成のせいで、死んだ。それはまあ、実力不足の結果だから仕方ない。
だけど、誰も救えず、結果も出せずに死んだことだけが、心残りだった。
そんなふうに思ってしまったからだろうか。
『次』に目を覚ました時、僕の前には『死神』がいた。
「起きましたね。さあ、あなたのたましいの名を教えなさい」
命令を下したのは、『死神』――否、銀髪の美しい少女だった。
混乱しながらも僕が名前を口にすると、少女はにこりとすることもなくこう告げた。
「幸福の庭にようこそ。あなたは死の恐怖から自由になれまし
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おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!優しい真珠色の、あるいは甘い三日月色の世界へようこそ。
現在物語はまだまだ序盤。大きな出来事もまさにこれからといった段階ですが、何より世界観と文章がとても美しい。
死霊術師の少女と死者の主人公。花々が咲き乱れる庭園に古い洋館。合間で刻々と変わる空模様が優美に描かれて、全編通して「ああ、この世界に入って自分の目で見てみたい」と思わせる確かな筆致が魅力的です。
童話のような、と表現すると、ハードな物語が好みの方は鼻白むかもしれませんが。穏やかな夜中、大好きな飲み物片手に読書するような時間、上質な癒やしがそこにあると、私は思っています。
あるいはセピア色の不思議の国のアリス。
あるいは誰もが抱えるノスタルジック。
派手で賑やかな展開が好きな私でも好…続きを読む