第30話 月ちゃんへのお願い


 ・・・

 

 朱里は少し黙った。考えている様子だった。

 少し時間がたつと、朱里は口を開いた。

 「女の子だったら誰でもいいかな~」

 7組の生徒で俺がその子の家を知っていて、朱里と話しやすい子か、、、

 「そんな子いな」

 あれ?そういえばこの前クラスの女の子と学校の外で話した気が... そうだ、

―――外島 月

 学校の近くのコンビニの斜め前の家に住んでいるはずだ。月ちゃんなら普段から朱里と話していた気がするし、月ちゃんがいいんじゃないかな?と思って朱里に提案してみた。

 「月ちゃんはどうだ?外島さん」

 ・・・

 「確かにそれいいねー。流石きょーへい」

 「だろ?月ちゃんならいいと思うぞ」

 「そうだね」

 「今日声かけとくよ」

 「ありがとう!くれぐれもはしないでね」

 「わかってるよ。じゃあいってきまーす」

 というわけで、今日の帰りは月ちゃんの家に行くことになった。

 学校についてすぐに俺と担任と生徒指導主事の先生と一緒に校長のところに行った。それは、実は昨日の夜に校長から呼び出しのメールが送られてきたからだ。それは、担任も生徒指導主事の先生も同じだったらしい。

 「失礼します」

 校長室に入ると、校長は自分の席に座ってデスクトップパソコンを見ながらキーボードを打っていた。俺たちに気が付いたのか、手を止めて俺たちを席の前まで手で招いた。

 「君たちに話さないといけないことがある」

 シーン

 急に寒気がした気がした。

 「それはね、警察が木村さんの遺体を見つけたらしいんだ。まだ骨を見つけただけでDNA鑑定とかはしていないらしいが」

 「見つかったんですか?」

 「よかったじゃないですか?」

 「ですね!」

 「え?ん?あ?」

 「どうしたんですか?和泉先生」

 「い、いやー、何にもないです」

 え?どういうことか全くわからない。家に朱里がいるはずだし、今朝も朱里と一緒に話した。何なら朱里も俺のことを知っていたし記憶に違いはなかった。そして、結衣にも順にも朱里の存在が見えていた。だから、見つかった骨は朱里の骨ではない そう思った。

 「分かりました」

 「また何かわかり次第呼び出しますので」

 そう言って、俺たちは校長室から出てきた。職員室に帰って俺たちはずっとその話をしていた。

 「みつかったのかー」

 「原因は何だったんだろうね」

 「そもそも勝手に外に出るなんてありえないですよね?」

 そんな感じで話して、時間はお昼になった。今日は特にしないといけないこともなく、担任とか複数人の先生も家に帰っていたので俺も帰ることにした。

 「お疲れ様です」

 学校から出て、俺は忘れずにちゃんと月ちゃんの家に行った。

 『ピーンポーン』

 「どちら様ですか?」

 「外島月さんの学級の副担任をしている和泉です」

 「分かりました」

 ガチャ

 「おう!月ちゃん」

 「どうしたの?先生」

 「今から話す内容は、誰にも聞かれてはいけないんだ」

 「わかった。今家に誰もいないから中に入っていいよ」

 「ありがとう」

 そうして、月ちゃんの家にお邪魔することにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る