第14話 夏休みの始まり
その後、会議室みたいな部屋で我々は保安官達と話をすることにした。事件の管轄である大阪府警察の警官も来て、「誘拐罪、殺人罪、死体遺棄罪」の疑いでこの事件の犯人の捜査を本格的に始めることになった。家の近所にもドラム缶を捨てた場所にも防犯カメラは無かったので、すぐに見つかる心配は無いのだが、それでもやっぱり心配だった。
教員達は学校のこともあるので先に帰ることになった。学校に帰ると夜中の1時頃だった。学校で先生方と少しだけ話していると、テレビでニュースをやっていた。
「…………で舞鶴湾で見つかった遺体は、大阪府で行方が分からなかった木村朱里さんの遺体である事が判明しました。警察は・・・」
「なお、犯人はいずれも不明で、警察は近くの防犯カメラや近隣住民からの目撃情報をもとに捜査をしています。」
警察が捜査を開始という情報などが放送されていた。順も結衣もそのニュースを見ていて、高飛びをしようかなどを真剣に考えてくれた。夜が遅いということもあって学校から帰ってきて1時間くらいで俺は寝た。
次の日、学校では1学期の終業式が行われた。明日から夏休みで、平日は有休をとったりして結衣と遊びに行ったりしようと思う。校長の話は長かったが、内容はよく頭に入ってきた。朱里の話をしていたからだ。
「この学校の大切な生徒である、『木村朱里さん』が誘拐されたのは皆さんご存じだと思います。その木村さんがお亡くなりになりました。皆さんで、黙とうをしましょう。」
そう言っている間に、俺と担任で大阪に帰って来たばかりのご両親を体育館の舞台に連れてきて、両親から話をしてもらった。両親の子供への愛がとても強く感じてしまい、本当に朱里を誘拐したこと、朱里を殺してしまったことを後悔した。
家に帰って結衣と一緒に夏休みに出かける話をした。もちろん朱里のことも考えたりしないといけないときはたくさんあるが、俺の本当の目的は
―――結衣を独占すること
だったから、一緒に遊ぶことも考えないといけない。というかもっと一緒に遊びたかった。
「夏休みだぞー 平日は有休取れるから、一緒に出掛けようと思うんだけどどう?」
「遊園地に行きたいな」
「俺も行きたかった(笑)」
「他にもアウトレットモールとか、日本全国いろんなところに行きたいな」
「せっかくだし行こうか」
そうやって俺たちの夏休みは始まった。結衣はずっとすることがないが、学校の先生っていうのは長期休暇でも平日は余裕で仕事があるのが少しつらいが、たくさん遊べるのは楽しみだから全然過ごしていける。
いろいろと2人で決めていたらおなかが空いたので家の近くにある牛丼屋さんに行くことにした。一緒に店に入り、注文をした。結衣は久しぶりの外で、久しぶりの外食で、久しぶりの太陽ってこともあってテンションが上がっていた。
俺らの席の向かいに1人の男の人がいた。見覚えがあるなーと思ったが、結衣がこう言った。
「もしかして、山本君?」
「あれ、もしかして西口か?」
ちなみに山本は結衣の元バイト仲間だった人間で、俺が無理やり頑張って解雇まで追い詰めたのだ。山本も結衣も久しぶりに会ったと言うことで楽しくしゃべっていた。俺は最初こいつを殺そうとかこの町から追い出そうとか考えていたけど、今となってはもうどうでもよくなっていた。
「西口さんの彼氏さんですよね!お久しぶりです」
「ああ、久しぶりだな。元気にしてたか?」
「おかげさまで。いろいろとあってバイトクビになったんですけどね...」
「そうなのか、大変だな」
「西口も元気にしてたのか?」
「まあね!」
そんな感じでたわいもない話をしていた。
家に帰った後、学校関係の書類を書いたりいろいろとすることがあった。その間、結衣は料理を作ってくれた。さっき山本と話していた時に聞いたのだが、結衣は料理があまりうまくないらしい。
しばらくしていると晩御飯を作って持ってきてくれた。においもそんなに良くはない。見た目は少しぐちゃぐちゃしている。食べてみると、塩が多かったり砂糖が多かったり、出汁が少なかったりとお世辞でもおいしいとは言えなかった。でも、結衣が一生懸命野菜を切る姿、火を調整したりする姿、料理を作る真剣な眼差しを見ていたこともあって、おいしく感じた。
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