第13話 朱里の発見
『ゴクッ』
俺は息を飲んだ。舞鶴湾といえば朱里の入ったドラム缶を捨てた場所だ。そう考えている中、ニュースは進んでいった。
「コンクリートが詰まったドラム缶が沈んでいるのを地元の漁師が発見し、第8管区海上保安部が調査したところ…」
思いっきり俺のやった事件のことである。しかも、『調査したところ』と言っている。俺はそのニュースを一心不乱で見ていた。ちなみに第8管区海上保安部というのは京都などを管轄している海上保安庁のことだ。
「中学生ぐらいの体つきをした女の子が発見されました。海上保安部によりますと、遺体の死亡推定時刻は……」
俺は超絶焦っていた。これから仲良くしようぜと言っていた傍から朱里を沈めたことがバレて、全国ニュースになっている。しかし幸いなことに死体の正体は『朱里』とはバレていないことだ。しかしバレるのも時間の問題だと思った。
しかし、見つかってしまった以上証拠を隠すなんてのは無理な話だった。そこで、帰宅中である順を呼び戻してどうするかを話し合うことにした。
しばらくして、順が家に来たので、3人で話し合うことにした。まず、この2人は朱里を殺したことを知らないので、その説明からすることにした。
俺が話していると、結衣は泣き崩れながら
「京平、な、な、なんでそんな事を、したの」
と怒っている様子だった。
順も、
「お前それはあかんやろ!1人の女の子殺すってふざけるな!」
と、とても怒っている様子だった。
しかし、警察に行っても全員が共犯で逮捕される恐れがあり、その辺はみんな危惧していたので警察に自首をしない事を決めた。
そんなこんなをしていると、俺に1本の電話が入ってきた。
ーーー学校
なんの事だろうと思いながら電話に出た。
「休暇中の所すみません」
結衣が入院になった時、家族が病気で少し仕事に行けないので…と電話をしていた。
「どうしましたか?」
「あの、2年7組の木村さんの事なんですが」
「はいはい、木村さんがどうしました?」
「先程、警察や海上保安庁から連絡がありまして」
そう聞こえた瞬間、動揺を隠しきれなかった。
「木村さんらしき死体が舞鶴の海で見つかったらしくて、保護者の方が今から舞鶴に行くのですが、和泉先生も今から少し学校に来て、同伴して頂けますか?」
「わ、分かりました!すぐ向かいます」
さっきのニュースでやっていた死体が見つかった事件について、身元がバレてしまったらしい。ここで行かないと言っても不自然なので、結衣と順を家に置いて学校に向かった。
学校についてすぐ、校長と担任の先生が俺の方に向かって走ってきた。
「待っていました、和泉先生」
「今から、私(担任)と、和泉先生と保護者の方と一緒に、舞鶴の海上保安庁に向かいますが、お時間は大丈夫ですか?」
「少しだけ立て込んでいますが…」
しかし、行けばこの事件の情報を手にすることが出来る と考えたので、行くことにした。
公用車で、舞鶴に向かっている途中、結衣と連絡を取り合っていた。順もまだ帰ってないらしく、順と協力して犯人が俺だって事を隠す案を考えてくれるらしい。
舞鶴につき、海上保安庁の建物に入っていった。霊安室らしき部屋に通され、死体を見ることが出来た。顔や体はあまり原型を留めていない感じがした。でも、俺自身はハッキリと朱里ということが分かった。ご両親も、顔を見た瞬間分かったらしく泣き崩れてしまった。担任はイマイチピンと来ていなかった顔をしていた。
保安官の話を聞くと、海に捨てられた日はだいたい特定出来たらしいが 防犯カメラを全て確認しても捨てられる姿や怪しい人物が映っていなかったらしい。
しかし、両親は生きてはいないが朱里が自分たちの元へ戻ってきたことが少しばかり嬉しかったらしい。
「見つけてくださって、本当にありがとうございました。生きて、見つかることは出来なかったけど、私たちの中では生きています」
と、母親が言っていたので我々教職員も深く礼をした。
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