第12話 結衣の病状は...

 「ただの風邪でした」

 「ふつーの?」

 「はい。普通の風邪です」

 結衣がここまでひどい状態になった原因が、ただの風邪だと聞いて突然体が軽くなった気がした。医師は、念のために1日だけ入院をしてほしいということで、結衣は入院することになった。もちろん一人にしておくと心配なので、俺もベッドの横にある椅子で過ごすことにした。

 看護師さんが、

 「優しい彼氏さんですね」

 とか言ってくれた。

 途中で順が帰ることになったので、部屋に結衣を置いて病院を出てすぐの駐車場に見送りに行くことにした。院内にあるコンビニで少しだけ話をした。

 「今日はショッピングモールに行こうって言ってたのにごめんな」

 「いいよいいよ。それよりお前に彼女がおったんやな(笑)」

 「まあな」

 「俺も彼女が欲しいねんなー」

 そんな感じで4~5分だけ話して順を見送った。

 次の日、結衣は無事に退院することが出来た。順が車で迎えに来てくれて、退院祝いということでまだお昼だが、居酒屋に入ることにした。

 家の近所にある居酒屋に入り、世間話とか学校の話とかいろいろしていた。店に入って2時間くらいした頃、酒をたくさん飲んだせいで滅茶苦茶に酔っ払っていた。あまり記憶には残っていないがビールやら酎ハイやらと、とにかく日頃のストレスを晴らすためだと言って、たくさん注文した。あまりにも酔いすぎて、俺はこんな話をしだした。

 「あのさ、結衣なんだけどずっと部屋で閉じ込めてるんだよねー(笑)」

 「そーなんや。つまりどういうことやねん」

 「だーかーら、閉じ込めてるんだよ」

 「なんでやねん」

 『パシッ』

 流石大阪人。すぐに突っ込んで叩いてくる。

 「俺は、結衣のことがだーいすきだから、俺のモノにしたいんだよぉ」

 「何を言ってんねん」

 「だから、お前も結衣にむやみやたら触るんじゃねぇぞ?」

 「わかっとるわ」

 「誰にも言うなよ?このこと」

 順は俺の話した『結衣監禁生活』について理解してくれた。もちろん朱里のことも言っていないし、社会人カップルっていうことで軽く受け流してくれた。その時には結衣も酔っ払っていて、楽しそうに笑っていた。

 俺はこの時に何かに気づいた。それは、家の外に出さないことだけが結衣にとっても俺にとっても幸せな事じゃない。もっと、いろんなところに行って、いろんな体験をさせてあげることが結衣にとって体中が温まることなんだな ということに。

 楽しい時間も5時間ぐらいで終わり、少しずつ酔いがさめたところで店を出て家に帰ることにした。店と家は近所なので、俺と結衣は歩いて帰ることに。順は電車で帰ることになった。

 家に帰って結衣と色々話すことにした。

 「なあ結衣。あの、こんなこと言うんはなんだけど...」

 「どうしたの?」

 「あの、本当にすまなかった」

 「どうしたの、急に改まって」

 「お前のことを閉じ込めて、誰にも会わせないことが幸せだと思っていた。でも、順と久しぶりに会って、そうじゃないってことを改めて思った。」

 「そ、そうなんだ」

 「だから、これからはもっと仲を深めるようなことをしていきたいんだ」

 「わかった!」

 これから結衣を監禁することはなく、仲のいい超激熱カップルになることにした。

 今度は動物園に行って、神社にも行って、映画にも行って、ドライブデートもたくさんする といっぱい予定を立てまくった。そして、教員採用試験のための勉強もたくさんすることにした。こんなにわくわくした瞬間は、カフェで告白をした時にOKをもらった時以来だった。

 そんな幸せな時間も束の間、夕方になりテレビでニュースを見ていたら、こんなものが流れてきた。

 「次のニュースです」

 「今日の昼過ぎ、京都府の舞鶴湾で......」

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