第29話 こんなのが家族っていうのか

 みんなにもらった八つ橋を食べ終わると、順は家へと帰っていった。和泉家のメンバーは特にすることがなかったので、結衣と一緒に朱里の勉強を手伝ったりすることになった。

 俺は数学科の教師と言うこともあるので、この前買ったワークに沿って、2年生で習う内容の数学を教えてあげた。

 「ねえ、きょーへい」

 「うん?どうしたんだ?」

 「『次の三角形Aと三角形Bが合同であることを、a=eを使って証明しなさい』っていう問題がわからないよ」

 「それはね...」

 っていう感じで個別なので学校で教えているより丁寧に教えることが出来たので、教師としても朱里の家族としても楽しかった。

 こんな感じで数学を気づけば1時間半もやっていた。朱里は案外要領がよかったので、この時間だけでも2学期の中間テストぐらいの範囲まで達成することが出来た。あとは復習をするぐらいでいいだろう。

 続いて、結衣の勉強でもある社会科の特に日本の地理について教えることになった。結衣は大学に行ったり教育実習に行ったりとそれなりの経験を積んでいたが、教師としての実体験はなかったので教えるのはあまり上手ではなかった。

 俺が結衣に教え方を教え、結衣が朱里に社会を教えた。こんな生活をしていても結衣は次の採用試験に合格しないといけないから、なにかとピンチだった。

 「えっとー、東京には霞が関ってのがあって、政治や経済の中心になって...」

 「ここを、マーカーで引くように言ってあげたらいいぞ」

 「つまり、この条件がそろっていたら首都ってこと?」

 と、それぞれが学ぶことのできるいい機会になった。

 時間もだいぶ経って、勉強も終わったタイミングで朱里は風呂に入っていった。朱里が上がると、結衣、俺の順番で変わっていった。俺が風呂から出るころには、2人ともリビングでゲームをしていた。

 「俺も入っていいか?」

 「京平も一緒にやるの?いい?朱里ちゃん」

 「一緒にやりましょー、きょーへい」

 「そうか、やろうか!」

 「何のゲームやりたいの?京平」

 「そうだなー、マ〇オカートがいいな」

 「私もやりたいと思ってました!」

 結衣たちと一緒にゲームをするのが楽しかった。これが朱里が言っていた“家族”なのかな?と思った。

 時間はもう12時を超えて、寝ることにした。明日も学校に行かなくてはいけないから、すぐに寝た。

 目が覚めると時間は6時半だった。いつもより少し遅かったが、時間には間に合うので特に問題はなかった。

 「おはよー」

 と、声が聞こえてきたので振り返るとそこには朱里がいた。

 「おう、おはよう」

 「きょーへいさ、朝ご飯ないの?」

 「冷蔵庫に入っている物なら何でも食べていいぞ」

 「ありがとう」

 俺は今日もお腹が空いていなかったので、朝食は食べなかった。

 そして、時間は7時45分になり、俺は学校に向かう支度をした。朱里がそばにいたので、俺は気になっていたことを聞いてみた。

 「朱里さ、学校には行きたいとは思わないの?」

 「それは...」


 「もちろん行きたいよ。でも、でも」

 理由は聞かなくても分かった。ほかの人に朱里が生きているのがバレるのが嫌だからだろう。1つ目の約束でも『誰にも言わない事』を結んだのだった。

 「行きたくても行けないのだったらさー、クラスメイトと一緒に会うのはどうだ?もちろん口止めはしてもらうように頼むしさ、」

 俺は名案だと思った。果たして朱里はどう思っているのか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る