第9話 朱里がこの世を去る日
目が覚めると月曜日になっていた。今日は昨日に決めた、朱里を殺す日だ。いつも通り朝食・昼食を作り、結衣と朱里の部屋に置いてきた。朱里にとっては最後の晩餐ってこともあって、朱里の好きなものを作ってあげることにした。
そして学校に行く。職員室に入ると早速校長と教頭、そして生徒指導主事の先生が駆け寄ってきた。
「和泉先生、木村さんのことなんですけど、」
と校長が話しかけてきた。忘れてる人がいるかもしれないから言うが朱里の本名は『木村朱里』なのだ。
「警察が今懸命に探してくれてるのですが、いろいろな保護者が『うちの子も誘拐されたりしないのよね?』とか、『今どういう状況ですか?』とたくさんの電話が来るんですよ」
「学校説明会をするのもありなのですが、事件のため犯人が聞く可能性があるので警察からはNGが出てしまいました。なので、生徒に手紙を配布し、木村さんのクラスの副担任である和泉先生に、生徒に説明をしてもらってもいいですか?」
犯人が聞く可能性があるというのは事実。まあ現にここにいるのだしな。
教室に行き、担任の先生とともに、朱里の誘拐について話すことになった。実は、失言をしてバレたくないのであまり話したくはなかった。しかし、教育者という立場で自分の受け持っているクラスの生徒が誘拐されている以上、話さないわけにはいかなかった。
「昨日とかニュースを見た人は多少知っているかもしれないが、このクラスの木村朱里さんが誘拐されてしまいました。誘拐された日、木村さんは何をしていたのか分かっていません。心当たりのある人は、先生に教えてほしいです。そして最後に、これは事件なので、テレビ局の人などに質問されても答えないようにしてください。」
そんなことがあって今日の授業が終わって家に帰ってきた。朱里の部屋に行くと、物音がしなかった。部屋の中に入ると、朱里は寝ていた。ちょうどよかった。今から殺すのだから。
まず、ドラム缶は家にあったのでそれを使うことにした。生コンクリートは、学校の技術室に置いていたものをこそっと持って帰った。朱里をドラム缶に入れ、コンクリートを流し込んだ。その瞬間、朱里の目が覚めた。
「きゃっっ な、何をしてるんですか⁉」
そう言って、出てきそうになったので一発殴った。すると、頭が相当痛かったのだろう、頭を押さえて動くことが出来なかった。その間にコンクリートを流し込んで固めていた。すぐに固まらなかったので、2人にご飯を食べさせた。朱里はコンクリートに入っている状態で、睡眠薬をご飯に入れておいた。効果はあったらしく、すぐに眠らせることが出来た。
夜の10時を超えた頃、朱里の部屋を見に来た。コンクリートはだいぶ固まってきた。舞鶴に運ぶころには固まるだろうが、明日も学校があるので今日はやめて明日にしておくことにした。
次の日学校に行くと、朱里の両親が学校に来ていた。校長と両親は校長室に行き、担任と副担任である俺も行くことになった。両親から話を聞くと、4日前に捜索願を出したとのこと。つまり今が火曜日なので土曜日。俺の家に来た日だ。両親は泣きながら朱里のことを話し出した。
「あ、あの子は帰ってくるのか、ふ、不安、、、なんです」
正直心が痛くなった。今頃はもうコンクリートの中で息はしていないだろう。つい4日前までは『せんせーの彼女めっちゃ可愛いね』とか言ってくれてた、休み時間に話しかけてくれた、クラスのムードメーカーだった、よき話相手のかわいい一人の生徒が今はもう生きていない。悲しくなってきて、ついぽろっと涙が出てきた。ご両親は、
「先生も、泣かないでください。必ず、必ず、絶対に帰ってくると信じていますから」
と言っている。本当に、いろんな人から愛されていたんだな と思った。
そして6時間目が終わり、今日の終わりのホームルームをした。朱里の話をした。俺からも、『木村は絶対帰ってきてくれる。そう信じよう』とみんなに言った。俺も殺したのを後悔するようになっていた。朱里を殺さなければ。でももうやってしまったことだし、今日の放課後は舞鶴にドラム缶を捨てに行くことを決めてしまった。
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