第10話 朱里と本当のお別れ
放課後になり、部活動を見に行っている間もソワソワしていた。本当に朱里を捨てに行くのが怖くなっていたからだ。でも、(そんなことを考えたらダメだ)と思いながら部活を見ていると、あっという間に定時になった。
急いで学校から帰り、家にあるドラム缶を運ぼうとしたが、一人で運べないぐらい重たかった。しかし、協力をしてくれる人もいなかったので、何とか気合で運び、車のトランクルームに入れた。そこそこ大きい車に乗っていたので余裕で車に入った。
結衣のご飯を作るために家に入り、夕食を作って食べた。もちろん結衣の分も部屋に持って行ってあげた。
時間は午後6時。早速舞鶴に向かって出発した。警察にバレずにドラム缶を海に捨てないといけないので、高速道路に乗ってできるだけ早く着くようにした。しかし、神様なんていないのだろうと思った。その理由は、高速道路で検問をしていた。大量の警察官が道路をふさいでいる。ゆっくりと車が進んでいき、ようやく自分の番になった。
「すいませーん警察です」
「どうしましたか?」
「ただいま、飲酒検問をしています。協力していただいてもいいですか?」
「いいですよ」
そうして飲酒検査は無事に終わり、結果も陰性だった。
「今からどこに行かれるんですか?」
「京都駅の近くで、おいしいもの食べようって友達に誘われて」
「そうなんですね!お酒を飲んで運転しないようにしてくださいね(笑)」
これで、検問という難関は無事に通り過ぎることが出来た。
車を走らせて2時間ぐらいで、京都駅周辺まで来た。時間は午後8時。一度高速道路から降り、京都駅の近くにあるお店で少しだけ腹ごしらえをして再度出発した。
車を走らせていると、舞鶴東インターチェンジに差し掛かったので、そこで降りることにした。高速道路が
「おい、にーちゃん」
「あ、どうも」
「今釣りでもしてるんかね?」
結構方言?か何かが強い人で話し方に癖がある人だった。
「いや、釣りじゃなくて写真を撮りに来たんです」
「ほう、わざわざ大阪から来てくれたんか」
車のナンバープレートを見てそう言っていた。いろいろと話し込んでいるうちに、もう一台の車が来た。その車を見た瞬間、そのおじさんは足早に去っていった。どうしたんだろう?と思っていると、その車も後ろに止めてきた。すると、30代ぐらいの人が4人ぐらい降りてきた。
「すみません~ 海上保安庁の者です」
最近はどうやら警察やら海保やらに話しかけられる。
「こんな時間に何されているんですか?」
この人たちは海のプロであり、職質のプロでもある。写真を撮りに来たといっても怪しまれるだろうと思ったので、
「釣りに来ました」
とだけ言った。海上保安官の人たちも長居をするつもりもないのだろう、早く終わりたい雰囲気だった。釣りと言ったらすぐに信じてくれたらしく、
「この辺は夏だと
とか教えてくれた。そうして少しだけ世間話をしたら海保の人たちも帰っていった。
周りに人がいないことを確認して、車からドラム缶を取り出した。そして、手を合わせて黙とうをした。一応俺にも心があるんだからな。そして、涙目になりながら、
「朱里、今まで本当にありがとう。お前と一緒に過ごした学校生活、ぜっちに忘れないからな。成仏をして、来世はもっと楽しく生きるんだぞ」
そう言ってドラム缶を海に投げ捨てた。とてつもなく重たいだけあって、深い海にあっという間に沈んでいった。
今日やらないといけないことを終えたので、再度高速道路に乗って家に帰ってきた。家に着いたのは11時半頃だろう。家に入って結衣の部屋に行った。結衣は起きていた。本当のことをすべて話すと、結衣はとても泣いていた。
―――じゃあ結衣先輩って呼びます!
そんな会話をしたことを今でも覚えているらしい。結衣と色々話しているうちに、自分の思っていることを話すようになっていた。
「俺はな、お前と一緒に暮らしたいからこういう結果になってしまった。もっと一緒に過ごして、遊びに行きたい。でも、朱里が死んだことを知っている結衣を外に出すわけにはいかないから、我慢をしてくれ。お前を殺すつもりも、悲しませるつもりもないからな。」
そう言って部屋から出て、風呂に入ったり、しないといけないことをしてから寝床についた。
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