第19話 朱里の遺体が行方不明
・・・
「行方不明になったそうです」
「・・・え?」
「だ、か、ら、いなくなったそうです」
全く理解ができなかった。朱里は俺が殺して、ドラム缶にコンクリートで埋めて、舞鶴の海に捨てて、それが見つかって、海上保安庁のや警察が捜査をしている。そして遺体は舞鶴の海上保安庁の霊安室にあるはずだった。
しかし、校長が説明するにはその遺体が行方不明。つまり遺体がなくなったということだ。常識的に考えてそれは絶対ないのだろうが、海上保安庁からの説明ではそういう事らしい。
俺たち教師陣は朱里のご両親に電話をかけて事実の確認をした。するとご両親にも連絡が言っていたらしく、木村さん一家は海上保安庁の人の話を直接聞くらしく、家に海上保安庁の職員が来るらしい。
俺たちはどうするかを校長に確認したところ、教師陣も話を聞くことをお願いされたので、朱里のご両親にそのことを伝えた。そして、4時間後に学校の会議室で話を聞くことになった。
時間がたち、3時間半ぐらいすると海上保安庁の職員4名が学校にやってきて、会議室に連れて行った。それから10分もしないうちに朱里のご両親がやってきて、話し合いを始めることになった。
座席を紹介すると、正面に学校の教師陣、向かって右側には朱里のご両親、向かって左側には海上保安庁の職員が座っていた。
話し合いが始まった。まず、遺体がなくなった時の状況の説明から始まった。
「我々職員は1時間に1回は遺体の確認のために見回りをしています。そして、午前10時ごろに見回りをしました。その時には木村朱里さんの遺体がなくなっていました。」
「勝手にいなくなった、という訳ですか?」
「い、一応そういうことになります」
「そうですか...」
「大変申し訳ございませんでした」
海上保安庁の職員は深く謝った。
ご両親の立場としては行方不明になった娘さんが亡くなった状態で見つかってそこからさらに遺体がなくなったとなれば相当ショックだと思う。
まあ殺したのは俺だけど...
それにしても遺体が急になくなるのは不思議で仕方がない。そこで俺は、
「海上保安庁の職員が木村さんの遺体を移動をしたわけじゃないなら、いったい誰が...」
すると、職員の方はカバンから資料を取り出して、俺たちに配ってくれた。その資料に目を通すと、
『入館管理書』
と書かれていた。つまり、庁舎に入った人が一目でわかる書類だ。ここ1週間分の記録と、遺体がなくなった今日の書類を見せてくれたが、入館した人はわずか3人で、1人目と2人目は船を航行するにあたっての書類を提出に、3人目は海上保安庁採用案内の書類をもらいに来ただけで、霊安室に入る人は外部にはいなかった。
また、防犯カメラの映像を見せてくれた。霊安室にはベッドが並べられていて、それぞれのベッドの間にカーテンがつけられていた。防犯カメラは入り口と室内についていて、カーテンの中までは見えないようになっていた。
入り口から入ってきたのは見回りの職員のみで、それ以外の人の出入りは見られなかった。しかも当たり前だがその間に朱里がカーテンの隙間、霊安室から出る様子は映らなかった。より一層謎めいてしまった。
「状況は分かりましたが、これからどうしましょうか」
と校長が言うと、海上保安庁の職員はすぐに、
「我々は警察に届を出しましたし、本部の人間や現場に出ない職員は捜索活動を行います。ご両親や先生方も、もし見つけられましたら110番通報をお願いします」
「分かりました。我々教員も協力します」
そう校長が言って、俺たち教員は会議室を退出した。
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