第18話 朱里がまさかの...
いろいろな景色を見たところで時間も遅くなってきたので帰ることにした。エレベータで下まで降りてビルから出ていった。天王寺に行ったことがある人ならわかるであろう、例の歩道橋を通っている時だった。歌声が聞こえてきたので歩道橋から下を見ると路上ライブをしている人がいた。どうやら投げ銭をしてリクエストをすると歌ってくれるらしく、結衣と一緒にお金を入れて思い出に残っている曲を歌ってもらった。
一緒に写真を撮ってもらって帰ることにした。帰りは行きとルートを変えて地下鉄ではなくJRに乗ることにした。電車に乗っている途中に俺も結衣も寝てしまった。どれぐらい時間が経ったのだろうか、結衣が目を覚ましたらしく起こしてくれたので、駅名を見ると終点の駅名が書かれていた。しかもその駅名が大阪から離れて木津駅だった。ちなみに木津駅は京都府の木津川市にある駅だ。電車に乗る時にあまり行先を見てなかったし、すぐ寝てしまったのでまさか帰り道とは関係ない大和路線に乗っていたのでびっくりしてしまった。しかもさらに運が悪く、終電を迎えてしまっていたので帰りの電車はない。かと言ってタクシーで帰るといくらかかるのかも分からないので近くのネットカフェに結衣と一緒の部屋で寝泊まりすることにした。
ネットカフェに入っても特にすることもなかったので、シャワーを浴びることにした。100円玉を3枚入れると10分間シャワーが使えた。結衣も女子用のシャワーを浴びている。シャワーから出ると、結衣は漫画と飲み放題のジュースを持ってきた。俺もジュースを持ってきて、備え付けのパソコンでネットサーフィン絵押していると、夏休み中の職員会議用の資料を作らないといけないのに気付いた。パソコンで学校のアカウントにログインして、資料を作り始めた。
結衣は相当眠たかったのか、漫画を散らかしたまま寝ていた。俺も会議の資料を作り終えて時計を見ると『AM 2:25』と書いていた。早く寝ないと思ったが眠たくならず、スマホをいじっていた。気づけば30分、1時間、2時間...と時間が過ぎていき、朝5時ごろに結衣を起こして駅に向かった。
電車が来て席に座ると急に眠気が襲ってきて、寝てしまった。
・・・
「キャー 助けてー」
急にそう聞こえてきて目が覚めると俺の前に座っていた人が倒れていた。一応学校の先生なので、心肺蘇生法とかは知っていた。意識を確認するも、意識がなかったので急いで非常ボタンを押してもらい事情を伝えた。すると、車掌は119番通報してくれたらしく次の停車駅で救急隊と合流するらしい。
呼吸を確認してみるも確認できなかったので心臓マッサージをすることにした。結衣は学校の先生になりたいのと大学生の時のこともあってで消防署で救命の講習を受けていたので心肺蘇生法は知っていた。
「1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,1,2,3,4,・・・」
「大丈夫ですかー! 聞こえますかー」
必死で救命活動をするも意識を取り戻さなかった。
心肺蘇生を続けていると、駅に到着した。ドアが開くと救急隊と消防隊の人と、駅員の人がこっちに向かって走ってきた。心臓マッサージを後退して、その人は搬送されていった。
「意識が戻ったらいいのにな」
と、帰りの電車で話していた。
そうやって電車に揺られていると、天王寺駅に着いた。今日はまだ平日で学校に行かないといけなかったので、天王寺に寄り道をせず乗り換えをしてまっすぐ家に帰ってきた。
家で朝ご飯を食べて、昨日作った資料を印刷して、学校へ向かった。学校について新学期の授業内容を考えていると、学校に1本の電話が入った。
「あの、すみません」
「はい、どちら様でしょうか?」
「海上保安庁の者なんですけど、校長先生はいらっしゃいますか?」
「はい、いますが」
「変わっていただけますか?」
「分かりました」
「校長先生、内線1番で海保の方からお電話です」
そうやって引き継いだ。校長が海上保安庁の人と話していると、深刻そうなまなざしで話し始めた。
「はい」
「はい」
「分かりました」
「はい」
「失礼します」
俺は朱里のこともあって何か気になったので校長に聞くことにした。
「校長先生、今のお電話どうされたんですか?」
すると、校長は暗いまなざしで
「木村、木村朱里さんの...」
ゴクン と、息を飲んだ。
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