第16話 誘拐犯 バレる...?

 「じ、実は...」

 「7組の生徒が誘拐事件が起きた日に木村さんが和泉先生の家に行くっていうのを聞いた生徒がいるんです」

 あいつクラスの子に言ってたのかよ。しかし困った。来たというのは本当のことで、それを聞いている人がいる以上嘘をついても仕方がないと思った。そこで俺は咄嗟とっさ

 「ええ、来るって言っていましたが」

 「が?」

 威圧感がすごい生徒指導主事の先生が問いただしてくる。

 「来ないでって言いました。それでも行くんだと言っていましたが結局来ることがありませんでした。」

 「で、『誘拐されていた』という訳なんですね?」

 「はい、そうです。」

 「分かりました。警察の捜査に協力するために今言ったことを警察にも話してくれますか?」

 「・・・」

 「もちろん、私たちは和泉先生が犯罪行為をしたとは思いませんし、和泉先生の味方になろうと思います。」

 「分かりました」

 「今日のお昼から、私どもと木村さんのご両親と警察署に行ってお話をしたり聞いたりしますので、よろしくお願いします」

 そういって俺は解放された。

 今は夏休み中で生徒は誰一人いないので、教室で寝ることにした。授業準備とかは今しなくても間に合うし、今日の朝はいつもより起きるのが早かったので眠たかった。

 気がつけば午前11時30分で、警察署に行くまであと2時間ほどになっていた。一度水道で顔を洗い、近所のコンビニにお弁当を買いに行った。コンビニから帰る途中、コンビニの斜め前の家に住んでいる外島 月ちゃんと会った。月ちゃんも2年7組の生徒で、割と朱里と話していた方だと思う。

 「お!京平先生じゃん なにしてんの?」

 「コンビニにご飯買いに行ってたんだよ」

 「そうなんだ!仕事大変だね」

 「まあね」

 「ところでさ、うちのクラスで結構話題になっているんだけど・・・」

 「ん?何がだ?」

 「朱里ちゃんが京平先生の家に行ってたって本当?」

 俺は思わず口に含んでいたコーヒーを吹き出してしまった。

 「どこからそんな情報が出たんだ?」

 「それはわからないけど、結構話題になっているよ」

 マジかよ... まさか生徒にバレているとは思わなかった。

 「んーとね、話すと長くなるんだけど、木村さんは俺の家に来るって言ってたんだ。俺はもちろんダメって言った。それでも来るって聞かなかった。でも言ってた時間になっても木村さんは来なかった。その間に誘拐されたのかもしれない」

 俺は、学校で話した内容・警察で話す内容をそのまま外島さんに伝えた。すると納得してくれたらしく、

 「そうなんだ」

 「そうだよ」

 「じゃあ正しい事をストーリーとかで載せておこうか?」

 俺は迷った。警察に口止めされるかもしれないからあまり口外したくはない。でも俺の名誉回復のためにしてもらうべきか。少し悩んだ末、本当のこと(正確には事実とは異なるが)をみんなに知ってもらった方がいいということで、ストーリーに載せてもらう事にした。

 学校に帰って昼食を食べている間に朱里のご両親が学校に到着した。そして、急いでご飯を食べて校長などの学校関係者と朱里のご両親と共に俺らの住んでいる地域の管轄をしている警察署に向かった。

 警察署に着くと、刑事ドラマで見たことあるような捜査本部が設置されている部屋に俺らは連れられ、誘拐事件担当の刑事さんや警察本部から駆け付けた捜査のプロらしい警察官を交えて話をすることにした。

 俺は学校でも外島さんにも話した内容を改めてここで説明をした。すると警察官は、

 「和泉さんの話がよく分かりました。和泉さんが嘘をついているようには見えないですし、防犯カメラにも和泉さんが木村朱里さんを連れ込む姿などが写っていないので、和泉さんが本当のことを話していると我々は判断します」

 そう言った後、朱里のご両親も俺に話しかけてきた。

 「うちの朱里が先生の家に押しかけようとしたなんて、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。こうやって貴重なお時間をいただいてもう何と言ったらいいのか...」

 「いえいえ。別にご迷惑だなんて。朱里ちゃんはいい子だったから迷惑はしてないですけど、もしうちに来る途中に誘拐されたのであれば、私も申し訳なく思います。」

 こういった形で警察署で説明や弁解を終え、学校に帰ってきた。学校に帰ってくると生徒指導主事の先生が俺のところに来て、

 「本当に君が犯人じゃなくてよかった。今日は時間を取らせて申し訳ないね」

 といって、まだ3時半ごろだが早退の許可をいただいた。

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