第2話 彼女の同僚を抹消するぜ

 「おーい、結衣。朝飯出来たぞ」

 「ありがとう!やっぱり京平の作るご飯はおいしいね!」

 昨日から結衣と同棲生活が始まった。初めて女の子と一緒に住むわけなのでとても緊張しているし、何をすればいいのかも分からない。まあ朝ご飯を作ってこれから俺は仕事に向かう。結衣はコンビニでアルバイトをしているらしい。

 「じゃあ俺学校行くから、食べ終わったら台所に置いといて」

 「うん。じゃあ、いってらっしゃい」

 (行ってきますのチューをしたいよ・・・)

 俺はとりあえず仕事に向かった。自分の勤めている学校は幸いにも家から近い場所にある。学校に向かっていると、ある一人の生徒と出会った。2年7組の朱里ちゃんだ。自分が副担をしているクラスでもあるので結構話す仲だ。

 「せんせー、おはよ!なんかいいことあった?」

 別に彼女ができて、同棲をしていることを正直に言ってもいいのだがメリットを感じれなかったのでいうのをやめた。

 「いや(笑)特にないよ」

 「そんなこと言っちゃって~ みたよ、“カフェ”で」

 「あ、う うぇ どこまで見たんだ?」

 「一緒に住もうとか言ってたっけな~」

 全部見られているんだが。

 「このこと黙っとけよ?同棲したってことは」

 「仕方ないな~」

 生徒に彼女の存在を知られるなんてこんなに屈辱的なことがあるのだろうか。

 今日は普通に学校で授業をして、放課後は職員会議で体育大会の話をした。特に何の変哲もないぐらい普通の日だったが、結衣に会いたくて、ソワソワしていた。定時になり、残業もなかったので急いで帰ろうとしたが、コンビニに寄った。確か、結衣のバイト先だった気が・・・

 「いらっしゃいませ」

 店に入って、結衣と一緒に食べるお菓子を選んでレジに持って行くと、イケメンな店員さんが対応してくれた。結衣が話していた、山本さんって同僚を思いだした。名札を見ても「山本」って書いていた。俺は「結衣のバイト先にこんなイケメンな人がいるとは」と嫉妬心を燃やした。とりあえず挨拶をしようと、

 「いつも、彼女の西口結衣がお世話になっています。」

 「あ、こんにちはー。ゆいちゃ... 西口さんの彼氏さんですか?」

 はぁ!?こいつ、いま結衣ちゃんって言おうとしただろ。なめてんのか

 「そうです」

 とにかくイライラしていたので急いで帰って結衣にあった。あんな山本とかいう男に会わしたくない。そうだ、あいつを殺せばいいんだ。

 ・・・

 いや、殺さなくてもあいつをこの町からいなくさせるだけで十分か。

 物騒なことを考えるが、これも結衣のためだと思うと楽だった。もちろん結衣には黙って実行をする。

 まずはコンビニの本社や店長にクレームを入れる。

 「もしもし、お前の店の従業員、どうなってるんですか?」

 「大変申し訳ございません。誰が何をしましたか?」

 しっかりこれを考えていたので問題なく話すことが出来た。

 「お前んとこの山本が、俺とぶつかっただけなのに胸ぐらをつかんできやがった。しかもそれだけじゃない。俺の家に『死ね』と書いた紙をポストに入れてきやがったんだ。首にしないと警察沙汰にするぞ」

 「大変申し訳ございません。事実を確認次第処分を決定します。」

 それでコンビニへのクレームは終わった。でもこれだけでクビになるとも思わなかったし、もっと過激なことをしたかった。確か山本ってやつは、俺と同じ大学だったよな。確か、、、大学3年生だったはずだ。

 そして大学にも電話をした。

 「もしもし、公立大学の学生課ですか?経済学部3年の山本って人が、私の家に『死ね』って書いた紙を投げてきましてね。バイト先でも胸ぐらを掴んできたり、どう責任取ってくれるんですか」

 「大変申し訳ございませんでした。」

 「あとさ、俺の女に痴漢をしたらしいな」

 もちろん嘘だ。全部嘘だが結衣のためなんだ。

 「わかりました。では一回山本から話を聞いて処分します。」

 「しっかり頼むぞ」

 そう言って電話を切った。

 それから確か2週間後ぐらいだろうか。結衣がバイトから帰ってくると、

 「同僚の山本って人 クビになったんだ。大学でもいろいろあったらしくて...」

 「そうなのか、それは大変だったんだな」

 俺はこうして結衣を守ってあげた。虫を一匹駆除までしてあげた。

 こんな彼氏を持って『結衣は本当に幸せ者だな。あいつは俺のモノ』心からそう思えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る