第31話

 そのまま俺は居間に通された。大きいソファーに座ると、月ちゃんがお茶を出してくれた。

 「それで先生、話って何なの?」

 「ああ、それな」

 俺はお茶を一口飲んで話し始めた。

 「木村朱里って同じクラスにいるだろ?あの誘拐された」

 「ああ、朱里ちゃんね 朱里ちゃんがどうしたの?」

 「実は朱里ちゃんを見つけたんだよ」

 「え?本当に?」

 「うん、もちろん本当だ。そこで、お願いがあるって言われたんだ」

 「へー、どんなお願いなの?」

 「『私を見つけたことは誰にも言わないで欲しい』って言われてるんだ」

 「なるほどねー、今朱里ちゃんはどこにいるの?」

 「俺の家」

 「はあああああああああああああああああああ!?」

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ 「だから、俺の家にいるの!」

「なんで誘拐してんの?」

「いやあのさ、誘拐はしてないからな。朱里が帰るところがないって言うから俺の家に泊めさせてあげてるだけだから」

「なるほどねー」

「でさ、朱里がクラスメイトの人と話したいって言うからさ、月ちゃんさ、お願いだけど朱里と会ってくれないか?」

「うーん、私はいいけどさ、私和泉先生の家に行っていいってこと?」

「それでもいいし月ちゃんの家でもいいよ」

「わかった!予定が合えばいつでも行くからまた連絡して」

そう言うわけで、朱里がクラスメイトである月ちゃんと一緒に会うことが決まった。

 早速家に帰って朱里に報告をすることにした。

 「ただいまー。朱里、ちょっとおいで」

 「うーん?どうしたの?」

 「今日の朝言ったこと覚えてる?」

 「クラスの子に会うように頼んでくれるって話だよね?」

 「そうそう、それなんだけどさ、月ちゃんが快くオッケーしてくれたぞ」

 「ほんとに!?」

 「ホントだよ」

 朱里はとても喜んでいる様子だった。何週間かぶりに友達に会えるってなったら喜ぶだろうな と思うから、喜んでくれて俺自身も少し嬉しかった。

 「いつ会えるの?」

 「お前が予定会う日ならいつでもいいらしいぞ」

 「ほんとに?来週の土曜日は無理かな?」

 「一回聞いてみるぞ」

 そうして俺は、自分のスマホを取り出して月ちゃんにメールを送った。送って2分もしないうちに返信が来た。

 『大丈夫ですよ!時間は適当に決めて来てください』

 「よかったな!朱里」

 「うん!」

 そうして俺たちは来週の土曜日に月ちゃんの家に行くことになった。


 その後、学校に行って仕事をしたり、会議に参加したり、部活動の指導をしたりと色々あったが、誰にも朱里が家にいることがバレずに過ごすことが出来た。

 土曜日になり、俺は朱里と一緒に月ちゃんの家に向かっていった。一緒に歩いているところを見られたら弁明のしようがないと思ったので、車で一緒に向かった。

 「もうすぐ着くぞ」

 「楽しみだね」

 「そうだな」

 そして、月ちゃんの家の近所のスーパーの駐車場に車を止めて、月ちゃんの家についた。

 「よし、行くぞ」

 『ピーンポーン』

 「はーい」

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