完全記憶の魔法使い～元社畜の救世譚

ある時期を境に現れた英傑の異名の数々。

大抵の人々はこれらを知っている。



『ベルグリッドのロイド』
『陰謀潰しのバリリス侯』
『ハートの騎士』
『魔導界の怪物』
『剣神の愛弟子』
『四大貴族の五番目』
『青薔薇の英雄騎士』
『神鉄のローア人』
『灰色の眼の魔王』
『虹色の眼の救世主』
『鎧の傀儡子』



世界各地の少年たちが、城の騎士たちが、社交場の貴族たちが、あるいは酒場の酔っ払いたちがこう話す。


「『ベルグリッドのロイド』はすごい。最強だ」
「最強は『陰謀潰しのバリリス侯』だ。彼はすごい」


誰が一番か。
絶えず語り草にされ、話題に挙がる名士、名将、偉人、英雄たち。



しかし人々は知らない。


これらが全て同一人物を表すことを。


数十年の間に、世界中で異なる呼び…続きを読む