24.転機

 

 前回のあらすじ。


 王女様の誕生日に行ったら王様から娘への誕生日プレゼントにされることになったよ。



 やったね。



 いや、おれは魔導士になる予定だったから困った。



 なんか強引だし。

 おれは何とか辞退する方法はないか探った。




「平民出身の子供に王族の騎士が務まるはずがありません!!!」


 

 止めてくれた人がいた。




 金髪と金眼、王族の特徴だ。

 彼とは会ったことは無いが王女と国王の決定に公然と意を唱えるということは……




 彼こそが常識人!!



 あ、そうじゃなく。



「シャルルお兄様、バリリス侯のお力はすでに証明されています」



 第一王子、つまりこの国の次の王。



(なんで彼がおれの味方をしてくれるんだ?)


 

 全く味方ではないのだがおれにはありがたい存在だった。



 常識人マジ感謝。



「王族の騎士とはすなわち王宮騎士。騎士は剣の力で認められた者がなるものだ。魔導士のロイド卿には不適格だ」



 全くもってその通り!



 シャルル王子に他の者たちも次々に同調した。



 ジェレミアは平民のおれが騎士になるのが気に入らないから。

 四大貴族は姫の近衛騎士になるとおれを側に置けないから。

 宮廷魔導士と王宮騎士を兼任する前例はない。

 宮廷魔導士長も反対だ。



「……でも、ロイド卿はなると」



 え?

 おれ、言ったか?



 言いました。



 姫はまたもうるうると悲しそうな顔をおれに向けた。


 狼狽えるな。

 いい加減操られていることに気づけ少年。



「ロイド、男に二言はねぇぜ」

「えぇ!?」

「ロイドなら騎士もなれるでしょう」

「えぇ!!」




 なぜ裏切った二人とも!!


 



「平民から~成り上がり~♪ 魔導士の~約束された未来~♪ ところがどっこい~うっかりロイド~騎士となる~♪」



 歌うなマス!!



「高名な二人の冒険者からもお墨付き。これなら問題ないでしょう?」


「姫様、私からもよろしいでしょうか?」



 今度は後ろに控えていたやけにでかい侍女?が姫に耳元でささやく。



(なんだ? 目の前で密談すんなよ!)



 姫はその話にうんうんと頷き、顔を伏せた。



「確かに早計でした。バリリス侯の人となりについて私たちは良く知りません。ですので、正式にテストを受けていただきましょう!」




 え? 今どこか妥協した??

 したようでしてないよね。



「そうだな、それなら異論は無い」



 騙されるなよ王子!!


 姫は条件を付けただけでおれの進路は変わってないじゃん!!



「おれも受ける資格だけならあると認めよう」



 おれが騎士になる前提で話がまとまろうとしていた。



 いけない!



 おれも口八丁、舌戦なら自信がある。

 方向転換するのだ!!



 宮廷魔導士、アイホープ!!




 おれは最後の抵抗を試みた。




「恐れながら申し上げます。陛下、私は魔法学院でより一層魔導の研鑽に打ち込み、いずれは父と同じ宮廷魔導士として陛下や姫様をはじめとした王宮の皆さまにお仕えするのが望みなのですが……」

「確かに、そなたの力は魔導の探求に費やすべきだな」

「お父様、今更魔導学院に通う必要が彼にあるというのですか?」



 何だよ、姫!

 おれの学院ライフを潰す気なのか!?



「まぁ、初等科に行く必要はないな」

「でしたら初等科は免除しましょう」



 ガーン!

 バカな! このおれがやり過ごせなかっただと!!




「うむ、その空いた期間に従士として王宮に務めるというのはどうか?」

「それがいいですわ! こんな優秀な人を6年も学院で遊ばせるなんてもったいないですわ!」

「うむ、では……魔導学院長、この者の初等科での受講を免除としようと思うが良いか?」

「はい、陛下。彼ならば中等科の受講選択と魔導図書館の閲覧だけで中等科卒業技能検定まで問題無く進めるでしょう」


 その場にいた王立魔導学院の学院長が実質初等科の受講を免除としたことで、おれの時間は丸々空いてしまった。



 逃げ場はなかった。

 さらば我が再びの青春……




 おれはテストを受けるはめになった。


■ちょこっとメモ

宮廷魔導士が王族に就くことは無い。

そこで顧問官として魔導士が就く。しかし、これらは宮廷魔導士になれなかった者たち。

一方王宮騎士は各王族の直属となる。

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