幕間 冒険者
■銅級『魔法の射手』 狩人のマス
やぁやぁー!
皆お待たせ!
主人公の登場だぜー!!
この歌って踊れる冒険者マスの名場面10000選から特にファンの人気が高かったあのシーンを解説しちゃうよ!!
『イケー姐さん!!』
そう!
あれはおれが演習でリトナリア姐さんが他の冒険者をぼこぼこにして――
ん?
おいおい、ひょっとしてロイド君と姐さんの試合!!?
このさわやかイケメン、冒険者ランキング第一位のモテ男マスの名場面10000選からの紹介じゃないの???
やる気無くしたー!!
そんな昔のこと覚えてないよ~!!
というか、あの時おれ何かしたっけ?
声がデカかった?
いやいや、そんなことどうでもいいよ!!
ロイド君の第一印象?
まぁ、おれ並みの天才だとは思ったね。
おれと同じくらい頭がいい。
あ、でもおれの方が若干モテるかな?
自慢みたいになっちゃうけどね。
ホント、申し訳ないけど。
ホラ、ロイド君はユーモアが無いからね~。
おれたちの関係?
王国を二分する天才二人。
ライバルみたいな。
時にはケンカもした。
一緒にバカなこともした。
いなくなってみると寂しいと気づく。
そんな唯一無二の親友みたいな関係だったよ。
ロイド君がいた時まではね。
本当に、惜しい人を亡くしたもんだ。
代わりにおれが活躍するから安心してね!
真面目にやれって?
今、真面目にやろうとしてたとこなんです~。
ロイド君かぁ~。
姐さんにはすぐ気に入られてたね。
全く、姐さんったら、若い燕ならここにもいるんだぜ☆
まぁ、同じ魔導士だし、姐さんは基本面倒見がいい人だから、危なっかしい彼を放っておけないのはわかるけどね。
おれも何度、彼の無茶に付き合わされたことか。
2、3回ぐらい?
そうそう、あのすぐ後だったなぁ。
森で――
え?
そこはまだダメ? 話してない?
ネタバレ?
難しいよ。
そっか‥‥‥
そうだよね。
突然話したらショックだよね。
まさか、あんなことがあって、彼があんなことになるなんて‥‥‥
悲しい事件だったよね。
グスン。
歌っていい!?
追悼曲『ロイド荒野に死す』お聞きください。
■金級『レッドハンズ』 エルフのリトナリア
マスの話は忘れてくれて構わない。
全部嘘だ。
ロイドは荒野で死んでいない。
それにライバルでも無い。
ロイドの方が100倍モテたしな。
あと構って欲しくてロイドにちょっかいを出していたのはマスの方だ。
一方的に。
そもそも、ここまでの話で出てきてないお前がなぜ私の前に話す?
ちゃんと自己紹介もしてないから、誰もお前が誰なのかわかってないぞ。
あ~、ほら。
私とロイドが演習で戦っているとき、大声で応援していた、あの男だ。たぶん、覚えてないと思うから気にしなでくれて構わない。
マスは西部のピアシッド山で山守をしていた山岳民族。
しかし、依頼で訪れた私と出会い、冒険者という仕事や、麓の世界について知ってしまい、付いて来てしまったのだ。
それが15歳の時で、仕方なく面倒を見ることにした。
マスには弓の才能があり、あっという間にエルフの私を超えてしまった。
恐らく、弓の腕ならローア大陸一だろう。
しかし、あの空気を読めない性格は何度言っても治らなかった。
指導者として責任を感じる。
おっと、ロイドの話だったな。
彼もまた特別な才能の持ち主だ。
何せ、五属性魔法を使いこなしている上、無詠唱、それも動作を必要としない不動の構え。
一般的な魔導士はまず詠唱し、魔力を込めやすい利き手を対象に向ける。そして使える魔法には適性があって、一つか二つが普通だ。
私も五属性魔法だと火が使えない。
無詠唱できるのも固有魔法だけだ。
両手に『風切』を纏うのは対人ではほぼしない、私の奥義。
それを使わせたロイドは正しく稀代の天才といえよう。
私もつい本気を出してしまった。
五属性魔法しか知らない彼にはフェアではなかったかな。
私の魔法を受けたロイドは壁に激突して意識を失ってしまった。
私はロイドの見舞いに行くことにした。
傷は大したことないようだったが、私の謝意と賛辞を受け取ってもらいたくて。
見舞いの花を用意して、礼に則った平服に着替えて出向こうとしたとき、奴に出会ってしまった。
「よぉ。久しぶりだな。と言ってもエルフのお前にとってはついこの間のことだろうがな」
大柄で、私を見下ろす黒く日焼けした南部ローア人。
「なにぃ~? 領主の屋敷に見舞い? よし、ならおれも付いていく」
その辺の十把一絡げの男なら殴って黙らせるのだが、この男はそうはいかなかった。
本気を出せば私より強いからだ。
この男がロイドに大きな影響を与えるなんてこの時はまだ知らなかった。
運命とは面白い悪戯を仕掛けるものだな。
■ちょこっとメモ
エルフは長耳族と言われている。エルフというのはロイドの勝手な脳内変換である。
長耳族はローア大陸から最も離れた大陸に住むため王国ではかなり珍しい。
リトナリアに惚れた新人冒険者が鉄拳を食らうまでが恒例行事。
リトナリアに認められ面倒を見られているマスは一目置かれているが、誰もパーティを組まない。
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