第12話「JKのパンツ」
「なぁ……どうすればいいと思う?」
「……貴様、リア充の分際でなぜ俺なんかに助言を求めるんだよ……自慢かよぉ……」
茄子が嫌いなことをバレたから数日後。それからも俺の嫌いなものが徐々にバレていった。
————まあ、そんなことはどうでもいいとして。
俺は久遠と近づくために何をやればいいかについて考えていたのだが……あまり答えが出ていなかった。近づくと言っても好きだからとかそういうわけではなく、久遠の心の傷を少しでも癒してあげたいだけなので勘違いはしないでほしい。
うん、そうだから……決して好きじゃないんだからねっ!
「自慢じゃないって……その子は結構色々あってどうしたら元気になるのかってことを聞いてるんだよっ!」
「……怪しいわ。どうせその弱みにでも漬け込みたいからいいデートスポット教えてってことだろ?」
「っ——そういうわけでは……」
「はぁぁ~~、そうかよそうかよ……クソッたれリア充だな」
「だから俺は付き合ってな——」
「はいはい、嘘嘘」
「嘘じゃないんだがなぁ……」
真面目に嘘でも何でもないし……たかだかキスをされたくらいで惚れるほど俺だって単純ではない。
まぁ、とは言っても見捨てられないからこうしているわけで……ご飯だって作ってもらってるしな。
「んで、俺は何もいい案なんて出せないぞ~~」
「え! だって昔、西片って付き合ってたんだろ?」
「それは昔だっ。それに、その件については思いださせないでくれ……俺だって最近忘れることができたんだから」
「えぇ……でも」
「でもじゃねえ。だいたい、そのくらい自分で考えやがれ……いい弁当作ってもらってるんだしよぉ」
「うぐっ」
そう言われたら何も言い返すことなどできなかった。
「まぁでも……適当に近場にでも行けばいいんじゃねえの?」
「近場?」
「この辺なら駅前のデパートとか……自然がいいなら動物園とか水族館あたりだってあるだろ?」
「あぁ~~確かに、それは名案かも」
「とはいっても彼女さんが好きならって話だが」
「好きって何が?」
「動物の匂いが嫌いだったり、動物アレルギー持ちかもしれないだろ? それに駅前のデパートだって人が多い所が苦手な人は無理だ」
「……確かに」
「ってなんで俺がここまで譲歩してるんだよ……」
「ははっ。西片って案外優しいところあるからなぁ」
「案外ってなんだよ。俺はいつも優しいぞっ! リア充以外にはな」
「はははっ——そら正解だ!」
チャイムが鳴り、昼休みが終わる。
そうして俺はどうやって誘うかなどを考えて、帰宅した。
帰宅後、家で今日の復習をしていた俺の元に、先日交換した久遠のRINEから「今日は少し遅くなるから待っていてほしい。なんなら先にご飯を食べていてもいい」と連絡が来る。
「まぁでも、特にやることないし……せっかくなら一緒に食べたいから待ってるか」
俺はご飯を食べずに待つこと二時間ほど。
「ご、ごめんなさいぃ~~」
久遠の疲れた声が聞こえると共に俺の部屋の玄関がガチャリとなった。
「……大丈夫ですか?」
「ま、まぁ……」
久遠は溜息をつきながら玄関に腰を降ろした。
見たところ特に荷物はなかったが何かあったのだろうか。委員会……とか、それならありそうだな。久遠ならやりそうだし、色々とひどい話も聞いてきたから押し付けられたのかもしれない。
「そうですか……まあ、とりあえずほら、ゆっくりしてください。俺がリュックとか置いてくるんで」
「えっ——そんなことっ!」
「いいんですよ。疲れてるようだし、汗も掻いてますし……シャワー貸すんで入っちゃってください」
「そ、それは……別に自分の部屋で入ってきますよっ」
顔を赤らめながら俯く。
だが、とは言っても……それも見越して風呂まで入れてしまったからな。
「風呂も沸いてますよ?」
「ま、まじですか⁉」
さすが久遠。
最近気づいたのだが彼女は風呂に浸かるのが大好きらしい。とは言っても、両親から無駄遣いはしないでほしいと言われてるらしく週に一度しか湯船には浸かっていないようだ。
おばさんとおじさんも稼ぎは良いはずなのに……とは思ったが何も知らない久遠にお金の大切さを教育したいのだろうか。俺よりも家事できるのに、難儀なものだ。
「あぁ~~、パジャマ持ってきます?」
「あっ、はい! ほ、ほんとにいいんですか⁉ というか、いいの⁉」
「あはは……いいよ、もちろん」
「あ、ありがとうございますっ‼‼‼‼」
目のキラキラ具合と言ったらそれはもう半端なかった。
久遠が風呂に入っている間、俺は久遠の部屋にリュックを置き、パジャマを持ってくるためクローゼットの引き出しの中を探していた。
「……んとぉ、確かこの辺にあるからって」
何も考えずにああは言ったが、こう考えるとどうしてか変な気分になる。
隣の家の女の子のクローゼットを物色する男。幼馴染で、色々と縁があることを除けば確実にやばい。許可はもらっているがそれでも罪悪感があってたまらない。
「はぁ、さっさと終わらせよう」
ため息交じりに呟いて、俺はすぐに終わらせることにした。
上の段から順番にパジャマを取っていく。パジャマと言ってもジャージだが、久遠はそれでなければ寝られないらしい。思い出してみれば確かにあの時も半そで短パンのはだけたジャージ姿だった————。
「って、いかんいかん……俺は久遠で何を想像してるんだか」
ぶるぶると首を振って作業に戻る。
「ズボンと半そでジャージ……えっーと、あとはキャミソールに……」
一つ一つ取り出していき、俺はその瞬間。
何かに気づいた。
何か……いや、何かではない。ハッとしたのだ。それの正体に、気が付いてしまった。
つまりは下着だ。
久遠はブラジャーはいらないと言っていた。
だが、下着はそれだけではないだろう。
「……ぱ、ぱんつ」
俺は真っ白なソレを両手で掴み広げ、その正体に圧倒されてしまっていた。純白、神聖、聖なる産物……いついかなるときも女の子のあそこを守ってくれる聖域が俺の手に収まっている。
小さなリボンが前面についていて、後ろは筋がくっきりとなった折り目。
「っ」
俺はゴクリと生唾を飲んだ。
数秒経ち、俺は首を思い切り横に振った。
「……いや、やめよう。やましいことなんかないんだ。これはただのパジャマだ……とにかく届ける事だけ、俺は今執事みたいなものなんだ」
やましい考えが頭の隅に残っていて飲み込まれそうになるのを言い聞かせながら、耐え忍び、俺は脱衣所に置いてある籠にタオルとそれら一式を置いた。
「っはぁ……とにかく、忘れよう。あのパンツは」
リビングでソファーに座り、シャワーの音を背に精神統一を図る。しかし、結局俺の脳裏から純白清純神聖パンツは消えることはなかった。
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